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「久し振りだね成実。」バチ 転がっている真田を目の前に、氷帝メンツが固まっていると、幸村が真田より少し遅れてこちらにやってきた。 「はい、お久しぶりです幸村君。」 「あー…今はそっちかぁ。」バキ 「はい。残念ながら此方にさせていただきました。」 「まぁ、仕方ないよね。ところで紫木は何時まで俺に攻撃を仕掛けてくる気?」 先ほどから幸村が声を発する度に聞こえてくる効果音は紫木がひっきりなしに幸村への攻撃を仕掛けている音だった。幸村も幸村でその攻撃をいなしていたわけだが、 「我が君との会話を止めるまでですよ幸村殿!」 「あはははー俺は止めろって行ってるんだよー?」 絶対零度の笑み発動。氷帝メンバーは思わず怯む。対照的に立海メンバーは「あぁ、やっぱりな」と言う雰囲気が見て取れた。そんな雰囲気を醸し出すまでこの攻防戦は行われているようだ。むしろ成実が立海に居たときの日常だったんだろう。 「いーやーでーすー!」 「精市、紫木、何時まで不毛な事をしているんだ。」 見かねた柳が止めに入る。 「あ、柳。いやーこうやって紫木と攻防戦繰り広げるのも成実が居ないとしないでしょ?なんかこう、久しぶりでテンションあがっちゃって。」 「私はいつも通り我が君に近付く害虫駆除をしているだけです。」 「害虫って誰のことかなー?」 「我が君に近付く全人類ですよ!」 「ところで跡部と忍足の姿が見えないようだが、…紫木の攻撃を受けた確率96%。」 「「「あ。」」」 忘れて来ちゃったテヘペロ。 「今呼んできますね!皆さんはアップなど始めておいて下さい。」 いち早くちょっかいをかけに行くため、成実は迎えに行く役を立候補。マネージャーを紫木と玖城だけにすることが一抹の不安ではあったが、紫木は基本自ら攻撃は仕掛けてこないため、玖城さえ何もしなかったら何もしてこないため多分大丈夫だろう。 「跡部のご子息に忍足君。いつまで大地と仲良しこよしでいらっしゃるのですか?」 「ひ、ひぃさんにはこのっ痛み…分からんのか……!」 プルプルと生まれたての小鹿の様な覚束無い足で忍足はなんとか立ち上がった。跡部はまだ転がっている。お坊ちゃまには刺激が強すぎたらしい。 「…あまり大きな声では言えませんが、分かりますよ。私だって紫木さんから攻撃を受けた身分です。」 「なん…やと!?」 「私の事をようやく勘違いせずに受け止めた瞬間、混乱と拒絶の感情にて私の私は犠牲になりました。あの頃はまだ萩之介の指南を受けていない時期でしたから、力任せに二次被害です。急所以外にも攻撃がきました。当分の間広範囲での打撲的痛みが私の私周辺に存在しました。比べて今はピンポイントではないですか?」 「あー…確かに。しかし非道いことを軽々と二人に…。」 「酷いこと、には同意しますが、非道いのは幸村君ですよ?」 「その心は?」 「こうなると知っていながら紫木さんを案内に寄越した幸村君だからですよ。」 テニスコートなら元立海生の成実本人が知っているから案内なんて本来は要らない。なのにわざわざ紫木を寄越した時点でこれは完璧なる悪意を纏った悪戯である。 「ッ…あんのセンター分けはぁあ!将来バーコードか前髪から後退していくんや!」 「その台詞、幸村君を前にして言ってみて下さい。その時は撮られる立場の私が撮る立場になって忍足君の勇姿を収めます。」 「…いやや。」 言ってみたら最後どんな事になってしまうか想像できたのか、忍足は拒否した。良い判断だ。からかうという目的は済ませたので美咲は正気に戻っていない跡部を忍足におぶる様に指示して、テニスコートに戻った。 「…なんで真田ものびてるんや?」 のびている真田の横に跡部を寝かせながら忍足は質問した。 「先程、紫木さんの攻撃の犠牲になりました。」 「敵味方容赦なしか。」 「彼女の概念に敵味方なんて有りません。私かそれ以外の分類なので。」 「何それ怖い。」 「さぁ、忍足君も練習に参加して下さい。私はマネージャーの仕事に戻りますので。」 「お、おぉ…せやな。」 成実は仕事に忍足は練習に、元有るべき本業に戻っていった。 |
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