汝は悪女の深情けなりや? | ナノ


038


「紫木さん。」

「はっ!?し、失礼いたしました!」

「はぁ…仕方ありまs―――。」

次の犠牲者が出る前に案内をしろ、と言いたかったのだが、ここに来て玖城が邪魔をしてきた。空気を読め。タイミングを考えろ。

「ねぇ?貴女、どうしてそうやって彼等の気を引こうとするの?」

「貴女…ふぅん。貴女が。」

紫木は視線を玖城に向けて意味深げに頷いた。

「私の質問に答えなさいよミーハー女。」

「紫木さん、こちらが玖城瑠華さんと言います。9日前にマネージャーになって下さった方です。」

「ああ、貴女が…貴女こそ、ミーハー女じゃないのかしら?」

「なッ!?」

喧嘩腰に玖城が来たので喧嘩腰に紫木も対抗した。ここに戦いの火蓋が切って落とされた。アウェイ感たっぷりの他のメンバーだが、
(見ていろ、これが女同士の戦いだ。)(ラージャ。)と視線を絡ませていた。

「でなかったら部員200人を抱えるテニス部のマネージャーになんてならないでしょう?」

「私は浮ついた男子は大っ嫌いなのよ!?今のマネージャーだって仕方無く、お詫びに…!」

「あっそ。そうやって自分はミーハーじゃないと?お前等には興味すらない、と?巨体ブーメランって知ってます?先程私に『どうしてそうやって』と声をかけてきましたが、それは貴女じゃないですか?そうやって冷たい態度をとって気を引こうとしてるんじゃないですか?」

「そんなんじゃないわよ!類は友を呼ぶって言うけどまさにそれね!藤ケ院と言いアンタと言い下らないことばっか!」

「我が君を悪く言わないでくださらない!?紛い物!我が君とそっくりの顔を貰って満足でしょう!?我が君を真似るなんて恥を知れ!恥を!」

「なッなんで!知ッ――。」

「紫木さん、そこまでです。」

これ以上は氷帝メンバーの前で話すべき話題ではない。そう判断した成実は戦いに割って入った。

「我が君…どうして。」

「玖城さんは真面目にマネージャーの仕事をして下さっています。事実、彼女のおかげで平員の数名が準レギュラーに昇格することが出来ました。」

「藤ケ院…。」

成実の庇った行動に、紫木だけでなく玖城本人も驚いていた。

「さぁ、これ以上時間を裂かれてしまったら不毛でしか有りません。紫木さん案内お願いできますか?」

「はい!では皆さん着いてきて下さい。」

やっとの事でテニスコートまで着いた。長かった。

「む、成実ではないか!やはり来てくれたグァッ!?」

「我が君に気安く声をかけないでよ!真田殿!」

衝撃的一面。
成実のファンであると言う意外な真田についても驚きなのだが、それ以上に仲間である真田にさえも容赦のないアタックを決める紫木。どちらに驚けばいいのだろうと、氷帝メンバーは困惑。

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