汝は悪女の深情けなりや? | ナノ


037


練習試合当日。
連れて行くメンバーはいつも通りのレギュラー。それから準レギュラーのメンバーはかなり変更があったようだ。話を聞けば向上心のあった平員が準レギュラーに対して下克上をしたらしい。いきなり仕掛けてくるとは素晴らしい。そんなくすぶっていた有能な種があったなんて。その種が言うには玖城の全面的なバックアップが有ったからだそうだ。玖城は一体何を考えているのだろうか?下心無くやっていたら評価しよう。しかし成実は裏も知っているから何だかなぁ、と思った。反対にレギュラー陣からの評価はあがったようだ。これでやっと±0だ。
そして氷帝メンバーで立海の正門までやってきた。そこに一人女子が立っていた。成実が「あ、紫木さん。」と呟いたことでレギュラー陣は戦慄した。「あの女子が百合で巫女で嫁な人。」と。

「氷帝学園の皆さんようこそいらっしゃいました。テニスコートまで案内を任されました。紫木梨花と申します。」

深々とお辞儀をした。自然な動きに育ちの良さが伺える。紫木の後ろについて氷帝メンバーが移動する。因みに成実は列の一番後ろに位置している。先頭を歩いている紫木の位置からでは成実の姿が見えない。だから紫木はすぐ後ろに位置していた跡部に対して笑顔を崩さず言い放った。

「ところで、我が君…成実様はどちらに?」

「アーン?貴様如きが成実の名を軽々しく俺様の目の前で口にするのか?」

跡部が逝った。あ、間違えた。
跡部が言ったその一言。その瞬間レギュラー一同、胸の中で両手をあわせて祈った。跡部の跡部がどうかご無事で。

「……我が君がいらっしゃると聞いて私はこの日を楽しみにしたいたのですよ。分かりますか?今私の脳内では我が君から始まり我が君で終わり我が君が総てな訳ですよ。それなのに何ですか、居ないのですか?今すぐ我が君を出しなさい。隠さないで下さい。まさか成実様を一番後ろに位置させているわけ無いですよね?野郎共の尻を我が君に見せつけているわけ無いですよね?この場、先頭にいないと言うことは、まだ行らしていないのでしょうか?車で師匠と共に後からいらっしゃるんですよね?」

……ヤベェ。今、野郎共の尻を見ながら成実、移動してるわ。

「アーン?気持ち悪い女だな。成実の目に入らない内に消え――。」

「我が君の名を軽々しく呼ぶなこの成金野郎!」

「はぅ!?」

エンダァアアアアア!イヤァイアアアアアアアア!
逝ったぁ!跡部の跡部が逝ったぁあああああ!鋭く!抉るように!ピンポイントに!イッタァアアア!成実!どうやったら止まるの!?ねぇ!紫木さんこっちに標的移し始めたよ!?瞳孔開いてるよ!?ねぇ!?

以上、部員の心が一つになった瞬間だった。そんな心が通じたのか、成実は行動した。

「紫木さん!」

一番後ろから紫木の名前を叫びながら両手を広げながら駆け出したのだ。その成実の声に反応した紫木は後ろから近付いてくる足音の方向に振り向いた。

「我が君!」

抱き合い、そして指を絡ませ合う。そこの空間だけ異空間めいた。百合の花が見えそうである。

「お久しぶりです。」

「はい!我が君が最後立海に来て学校で出会ってから38日と17時間と11分26秒。最後のメールから10時間と38分57秒!そして我が君に名前を呼んでいただけてから79秒経過いたしました!本当にお久しぶりです!」

「よく覚えて下さっているようで光栄に思います。」

「はぁあッ!有り難きお言葉!」

「ですが、いけませんよ。殿方の急所を蹴り上げては。こちらまで痛く思ってしまいます。」

「し、失礼いたしました!お見苦しいものを…ッ次からは我が君の視界に入らないところで始末いたしますね!」

「ありがとうございます。」

「いやいやちゃうやろ成実!!止めさせろや!そこまで理性的に判断できるんなら止めよう努力しろや!」

はい、一同合掌。

「貴様如きが我が君の名を呼ぶな下人!」

「は、ッっづ!?」

跡部の跡部の次は忍足の忍足が犠牲になったのだ。

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