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「なッ!?なんですって!?」 「あ。」 しまった。口に出してしまった。ついうっかりうっかり。 「やっぱり跡部達は騙されているのね、哀れだわ。こんなにも薄っぺらいミーハー女に言いように操られるなんてね。」 「操ってるとは…心当たりが全くないのですが……。」 「白々しい。私が何も知らないとでも思ったの?全部お見通しよ。」 「全部、ですか?」 「そうよ。あなたが逆ハー補正を受けてるトリッパーなんでしょ?」 「トリッパー…ですか…。」 「しらばっくれても無駄よ。じゃなきゃ説明つかないわ。その美貌、無条件に愛されてる今の状況。何よりも私の邪魔しかしてないじゃない。」 「私は貴女の邪魔をしているつもりは…。」 「ふん、どこまでもしらを切るつもりね。良いわ、立海の前でお前の本性を暴いてやる。」 「……そんなッ!」 事をしても無駄無駄無駄ぁ! 「精々、そのときまで偽りの愛に浸れば良いわ。藤ケ院成実。」 涼しい顔で言い放つ。成実を見下し、指を指して嘲り笑った。 「あら、私の名前を覚えて下さっていたのね。光栄ですわ。私に対するその態度を評価して、喧嘩受けて立ちましょう。そして思い知らせてあげましょう。」 玖城に対して背中を見せていた成実だったが、バインダーを片手に振り返った。 「何をよ。」 腕を組み自信満々な態度な玖城。ちょっとその自信満々な態度を崩したくなった。だからちょっとちょっかいを出したくなった。 「この高貴な私、藤ケ院成実が貴女如き異物に負けないという事ですよ。」 バインダーを玖城の首元目掛けて突き出した。後数ミリの所でぶつかると行ったところで寸止めた。玖城が下手に動いたらぶつかっていたかもしれないが、それすら出来ないほどの一瞬の動き。 「あんたッそれがやっぱり本性なのね!」 「クスクス、どうでしょう?私は沢山の面を持っているので一概には言えませんね。さぁさ、そろそろ皆さんが休憩に入る時間ですよ。玖城さん、お喋りも良いですがご自分のしなければならない事を済ましてからお願いしますね?ではお先に失礼します。」 成実は玖城に話し掛けられながらもこなさなけれはならない仕事は行っていた。しかし玖城は成実の揚げ足を絡め取るのが必死で仕事を途中で放り投げてしまっていたらしい。 成実が部室の去り際に玖城の方に視線をやると背後に般若の面が見えた。 嗚呼怖い。 |
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