汝は悪女の深情けなりや? | ナノ


028


次の日、成実は予想していたが、他のメンバーが予想もしていなかったことが起こった。玖城が放課後、レギュラー部室にまでやってきたのだ。
「おっしゃー。部活の始まりじゃーい。」「「「おしゃー。」」」「失礼、ここはテニス部部室かしら?」「「「誰!?」」」「私?私は玖城瑠華だけど。何か文句ある?」「「「なん、だと!?」」」←今ココ
状態である。
そして両者とも無言になる。忍足は顔を青ざめ、冷や汗をかいている。どれだけの苦手意識を持てばここまでになるのだろう。跡部達は玖城の顔を見て、成実のそっくりさんだと驚いている。そっくりではあると聞いていたが、クローンのように全く同じであるとは思いもしなかったのだ。成実はそんなみんなの反応を見て楽しんでいる。玖城は一体何を考えているのだろうか?大方成実の顔に驚いて、成実の存在に驚いているのだろう。自分とソックリな顔を持つ人物。そして居るはずのない女子マネージャーがいることに対して。

「貴女が忍足君のクラスに転入してきた玖城さんですね?初めまして藤ケ院成実です。話には聞きましたが、本当に私にそっくりですね。」

無言が続いては何の進展も無いと判断した成実はどうでもいい世間話を、と話を持ちかけた。

「…失礼ね。あなたが私に似ているのよ。」

自分の望んでまで手に入れた綺麗な顔が天性で手に入れている成実に嫉妬したのだろうか。その答えはとても辛辣であった。

「失礼致しました。申し訳御座いません。」

「ふん、分かれば良いのよ。」

「そして玖城さん。どのようなご用事で部室に?」

話が進まないし、若干腹がたったのでさっさとぱっぱとちゃっちゃと用事を済ませてどっか行ってほしい事態である。

「…忍足!」

成実に促された玖城は視線を自信なさげに下げ、忍足の名を呼んだ。

「なッ何や!?」

「き昨日はごめん…なさい。悪口を言ってしまって…。」

「!?かまへん…よ。気にしとらんし……代わりに…か「お詫びとしてマネージャーをしてあげる。」

「へぁ?」

忍足としては「今後一切関わらないのなら」と言いたかったのだが、玖城は忍足の発言を遮って忍足の願いとは逆の提案をした。そしてその言葉を聞いた瞬間、傍観に徹していた跡部を初めとする半部外者は戦慄した。今なんて言ったこの女、と。

「お詫びにマネージャーをするわ。嬉しいでしょ?」

「えー……。」

「私はこの通りミーハーじゃないし。むしろなるべく距離を置きたいのが本心だし。適任だと思わない?」

「アーン?何勝手に話を進めてんだ?」

堂々と自分の考えを押し通そうとしたのだが跡部が若干ビビりながら苛つきながら牽制した。

「あt……貴方名前は?」

玖城は何かを言い掛けたが、止め跡部の名前を聞いた。

「跡部景吾だ。覚えとけメス猫。」

メス猫発言頂きました。いったい何人のメス猫がピギャったのだろう。玖城は水をかけられたように顔を強ばらせた。

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