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二人は何時もより早めに部活へと向かった。詳しく言うなら放課後にある掃除の時間を免除してもらったのだ。準備は万端にするべきだからね。 滝は部室に、成実はマネージャー室へと向かう。両方とも富布里の姿は見受けられなかった。今のうちだ。と着替えてボールなどを準備する。それから今日はドリンクも準備する。無くなったら困る物を全て部室、マネージャー室から出した。個人の物はすぐに使用されるので動かしはしない。 「Aー!?もう来てる!今日は俺が一番だと思ったのに…。」 準備を着々と進めていると、成実と滝の他にジローがやってきた。やってきた早々テンションの変動が忙しいやつである。 「こんにちは、芥川君。充分早いですよ?」 「一番じゃないと意味ないC!」 「それは悪いことをしてしまいました。今日はやることが多いので、ちょっと掃除をせずに…。」 「ずっりー!じゃあじゃあちゃんと掃除してきた俺の方が凄いC!」 「全くその通りです。素晴らしいですよ芥川君。さぁ、準備をしてきましょう。早く来た意味が無くなりますよ?」 そう言ってジローに後ろを向かせると跡部や忍足、宍戸や岳人、残りのレギュラーメンバーが来ている。 「あー!ひでぇ!じゃ成実、後でね!」 「はい、練習頑張りましょうね。」 手を振って見送る。周りを見るとまだ富布里は来ていない。このままでは遅刻である。態度が悪い。 「成実さん、何を企んでいるんですか。」 「日吉君、こんにちは。人聞きが悪いですよ?企むなんて、何も企んでませんよ。」 「外面ではでしょう。内面は何を考えているんだが。」 「私の秘密を暴こうだなんて日吉君はやんちゃですね。」 「まぁ、まともな答えが返ってくるとは思っていませんけど。その様子だと一時間もしない内に何かが始まるんでしょう。」 「流石日吉君。よく分かってらっしゃる。」 「何度その雰囲気を纏った貴方に悪さを働かれたか…。いい加減覚えますよ。」 「悪さだなんで、お茶目と言って下さい。」 「ハッ、お茶目で済むレベルか。」 「済むレベルですけど?」 今までの悪巧みも謝ればすんだのだから。 「…着替えてくるので。」 返す言葉がなかったのか、日吉は誤魔化すように去る。去り際、成実は日吉が横を通った瞬間呟いた。 「俺の今企んでること当ててみろよ。そうしたら事の顛末ぜぇんぶ教えてやんぜ?」 「!?」 言った瞬間成実も日吉と反対方向へ進みだした。日吉が勢いよく振り返っても成実の背中を見つめるだけだった。 「さてさて、どっちの部屋を荒らしてくれるのか。」 テンプレ通りに動くしか脳がなかったら強制送還にしよう。 部活が始まって、みんながアップで外周に出かけた。20分もすれば一番早い人が帰ってくるだろう。 それを見計らって、と、 そう考えていたらピンクのツインテールが視界の端に入ってきた。とても目立つが当の本人はこそこそとしているため、気付かれていないと思っているようだ。そんな様子を観察していると、富布里はレギュラー専用部室へと入っていった。 おおぅ…そっちか…装飾品自体が高いから止めて欲しかったが……いや、やっぱ止めに行くか。テンプレ通りと言う事が分かったわけだから。 成実は富布里が入っていった部屋に数分間を開けて続いて入っていった。すでに中は少し荒らされている状態だった。腕を組み入り口にもたれかかり、冷めた声を出した。 「…富布里…さん、何をやっているんですか?」 |
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