汝は悪女の深情けなりや? | ナノ


015


クレープ(フルーツ、クリーム増量)を受け取り列から離れた成実。次いで忍足、岳人とクレープを注文。クレープ屋から少し離れた場所でメンバー全員が合流。

「なんやひぃさん、モテモテやんな。」

「恐縮です。」

当たり前だろバァカ、と言う言葉が聞こえたような無いような。

「ぃ、ぃぃなぁ。成実ちゃんばっかりぃ…。」

嫉妬心剥き出しの富布里。妬ましい。そんな気持ちでいっぱいのようだ。クレープの食べ方がブチィと噛み千切る感じになっている。

「すみません…私如きが烏滸がましいですよね…。」

「何言ってんだ!成実こそそう言う扱いにされるべきだ。クソあの店員いいとこ取りするか…!こうなったら俺様だって!」

跡部も何だか悔しそうである。富布里とは別の意味で。

「お止め下さい。私はその様に崇められたくてやっているのではございません。」

「…すまねぇ。」

「分かれば良いのです。富布里さん、よろしければ私のも食べますか?」

「ぃぃのぉ?」

チラッと上目遣い。身長低いと自然にそれが出来るからお得だね。

「…良いから言っているのですが?」

「ゎぁぃぁりがとぉ!」

成実の手に持たれているクレープを富布里は、はむっと口にした。小さなお口(笑)で食べたため、口の横にクリームが付いてしまったようで汚れている。しかし、富布里は取る気配もなく再び自身のクレープを食べ始めた。

あぁ、あれか。「ほら口の横付いてるぞ。」「えぇ、どこぉ?」「だから口の横だって。」「んー分かんなぃ…取ってぇ?」「ったくしょうがねぇな。」「ぇへへへ。」みたいな展開を待っているのだろう。証拠に先程よりも口数が多くなりアピールしている。

ぁたしのここぉ汚れてますよぉ!

ワロス。
しかし誰も教えてやらない。と言うかどん引きである。まさか漫画にベタに存在している。他、育ちの良いお坊ちゃま達には信じられない光景だしね。そして成実はあえて富布里の夢をぶち壊す。

「富布里さん。口の横、汚れていますよ。」

言うのと同時にハンカチでふき取って上げる成実。うわぁお、優すぃ。有無も言わさずふき取られてしまった富布里。
たとえ成実に指摘されても「え?嘘ぉ恥ずかしぃ、景吾ぉ、取ってぇ?」と言う気満々だったのに、と富布里の顔面が語っている。
いやー、何度見ても可愛らしいお顔が歪む姿は面白い。

「ぁ、ぁりがとぉ…成実ちゃん…。」

ついでにプライドもへし折っておこう。

「いえ、お礼を言われるようなことはしていません。口元を汚した人と共に居たら私達の品格を疑われますから。」

「ひ、酷ぃ!そんなことゅゎなくたって良ぃじゃないのぉ!」

「俺、初めて見たC。違和感なくて口元にクリーム付けるとか、お前ちゃんと親に教育してもらった?」

「ジロちゃんまで…ッ。」

「あぁ、そう言やぁ俺、聞いたことあるで。ちっちゃい頃に口汚しながら物食べとった子は大人に口汚しとっても気にならんくなるて。あれ、ホンマやったんやな。」

「そ、そんなこと無いよぉ!ぁたしちゃんとぉ育ってきたもん!」

「育ち云々は置いておきましょう。そして富布里さん。制服を着ている間は氷帝の生徒としての自覚を持って過ごして下さい。貴女が思っているほど氷帝の名前は軽くないのですよ。」

「…ッ帰る!」

冷たく言い放たれた言葉を避けるように富布里は逃げ去った。持っていたクレープは地面に叩きつけた。勿体ない。


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