汝は悪女の深情けなりや? | ナノ


016


成実が無惨に散ったクレープから目を上げるとそこには静かにガッツポーズをしているメンバー。

「…帰りましたね。これからどうするんですか?成実さん。」

「そう、ですね…カラオケにでも行きましょう。」

成実は計画になかった場所をあげた。成実は一刻も早く人目のないところへ行きたかったのだ。だって腹筋をこれ以上酷使するのは気が引けるんだもの。

「ギャァアアアハハハハハハハ!」

近くのカラオケに着き、一室へ通される。成実は一番に入室し机の上に乱雑に鞄を放り投げ、ソファーに突っ伏した。そしてすぐに聞こえてきた笑い声。成実だ。女性らしさも大和撫子も無くなって、ただの中学生男子である。

「成実、羽目を外しすぎないでよ。下品。」

「フクックヒヒ…っハハ、ワリッでもなクククっい、今まで耐えてきたんだぜ?フフ、許してくれよッ。」

カラオケにやってきたというのにだれも歌おうとせず、成実の笑い声だけが響いていた。それからしばらくして成実は落ち着いたようで、息を整えながら体制を整えた。

「満足した?」

「……ハー…うん。とりあえず。」

「酷ぇな。俺様がこうも苦しんでいたというのに笑うなんてな。」

「ワリィワリィ。俺基本笑い上戸だからよ。つーかお前ら見た?富布里の歪むあの顔!人間ってあんなにも顔面歪めれるんだな。」

「そんな余裕ねぇよ。俺はそれ以前に俺様の好きな食べ物を知られてる時点でキモくて、どうしようもなかった。」

「あー…ご子息は仕方ねぇか。確かにあの発言はびびったな。まさかご子息はプディングが好きだったなんて。」

「作ってくれるのか!?」

「ハッ誰が。その思考にいたったことに感服だぜ。」

「ツッコむとこそこかい。もっと由々しき事態やろ。あの女、跡部の好物知っとったんやで?俺ら誰も教えとらんのに。」

「いやいや、オッシーよく考えてみろよ。お前等は人気者だ。校内新聞のインタビューで答えたりしてんだろ?つまりそう言うことだ。富布里はそのインタビュー記事で好物を知ったが、よく調べず、プディングと言う言葉だけを拾い、それをプリンの亜種だと勘違いしてのあの発言だ。勘違いなら誰でもするんだぜ?許してやれよ。」

成実ってばチョーヤサシー。富布里の失態についても軽やかに鮮やかにカバー。拍手喝采大欄円。

「…そう言うことなんかなぁ。」

「そう言うことだっつってんだろ。しつけぇぞ。」

ソファーにふんぞり返り足を組んで忍足の発言に対し苛立ちを表した。

「成実、外しすぎ。」

そんな態度に滝は口を挟む。

「いいじゃん別に。人の目なんてねぇぞ?」

「監視カメラ、磨り硝子、防音されているようでされてない壁。」

ここの空間にいない人にも伝わる危険のある項目を滝は述べた。それはもう絶対零度と称される表情で。

「あ、ヤベ。」

「で、言い訳は?」

「……。」

「頭首様に言いつけちゃおっかなー?どんな罰が下るのかなー?休憩無しの立ち回りの稽古かなー?一週間位の強化稽古かなー?いっそ出禁?」

「だぁああああ!勘弁ッ!確かに羽目を外しすぎました!すみません、申し訳有りませんんん!」

「分かればよろしい。」

滝は成実の回答に満足がいったらしく、にこりと笑った。

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