汝は悪女の深情けなりや? | ナノ


013


公園に向かって集団下校。富布里を先頭について行くメンバー。富布里の横には誰も付いていない。反面成実を取り囲むようにメンツは位置していた。
なんかSPみたいである。威圧感ハンパない。止めてくれないかな。
しかし眼福かな。富布里の悔しそうな顔。チラチラと成実の方を向いて睨んでいる。何故睨んでいるのに跡部達に気付かれていないのかというと、富布里を直視しないようにあっちこっち向いたり富布里と同じ様に成実を向いたりしているから。
そして富布里は痺れを切らしたのか方向転換し成実に近付いてきた。しめた。

「成実ちゃ――!」
「富布里さん丁度良かった。あの…私と並んで歩いて下さいませんか?」

文句を言われる前に成実は台詞を遮った。ちゃんと言葉には恥じらいの声を乗せて。まぁ!少女!

「え?いいよぉ!もう成実ちゃんはしょうがないなぁ。」

富布里の思惑。成実近づき、自分の取り巻きなのよ。と言う気分になる。と言うか跡部達を侍らすのはぁたしなのよ、と成実に訴える。
成実の思惑。富布里が近づくことによって、跡部達が若干距離をとる。と言うか跡部除けである。
よって、成実の計画通り。

富布里は可愛いらしさを表現するために成実の腕に絡む。行き過ぎ友情表現とでも言うのか。百合百合してる。可愛い子(黙っていれば)と腕を組むなんて男子にとって役得、ステータス以外のなにものでもない。しかしまぁ、跡部達は若干距離を置きますよねって言う。富布里を確実苦手認定しているため、成実が近くに居おうとも距離を泣く泣くとる。

そう、「闇の隙間より出でし油を纏った疾走する漆黒の悪意(別称:G)」が苦手な人間が、「三万年前より進化を放棄し姿を変えず過酷な環境を生き延びし生物(通称:G)」を見つけた瞬間に危害を加えることも出来ずジリジリと確実に距離を置くようなことである。さながら成実は「北欧などでは家に出現すると、とても充実した家と言う象徴(字:G)」を退治する人間と言う感じなのか。
跡部達は二人を先頭に後ろについて行く姿となっていた。思い通りにならなく顔をしかめる富布里。ざまぁである。
そんなこんなで公園に到着。富布里が言っていたようにクレープ屋の前にはカップルがいっぱい。ピンクいオーラがそこで発せられている。いぶし銀のオーラが来い。
そんなオーラを当てられた跡部達。瞬間的に帰りたい、と言う表情になった。本来なら男子っぽくゲーセン行ったらファーストフード店に行くはずだったのに、ドンマイ。

「ね、ね!つぃたょぉ!ぃっぱぃカップルが居るねぇ。並ぼ?ぁたし早く食べたぁぃ!」

「あ、あぁ…。」

成実の腕から離れ跡部にアタックなう。上目遣いの達人と言う称号を与えたい。
跡部は逆らうことなく、富布里に腕を引かれ長蛇の列に並ぶことになった。その後ろに並ぶ残り成実達。

「ところで成実。君はカップル限定の欲しい?」

滝が成実に質問をした。

「そう、ですね。…限定品と言うなら食べてみたいかもしれません。私には無縁のものですから。」

今は色恋よりも稽古と遊びで忙しい。

「ぇえー?成実ちゃん彼氏居ないのぉ?」

「はい、彼氏は居ませんし…作りたいとも思いません。そう言う富布里さんはいらっしゃるのですか?」

「ぁたし?ぁたしも居なぃょぉ。この学校に来る前ゎ居たんだけどぉ…ふられちゃって……ぁたし独りぼっちになっちゃったんだぁ…。」

同情を誘う富布里。目を伏せ、肩をちょっと震わせ、跡部の腕を更にキュっと締め付け、お涙頂戴。

「独りぼっち、ですか。」

「だからぁ…みんなに甘ぇちゃうのかなぁ?」

「我慢するより良いことだと思いますよ。しかし、富布里さんも下らない男に引っかかることが無いように過ごさなければいけませんね?」

「っ…はぁぃ。成実ちゃん姑みたぁぃ。」

成実の一言で嫌味大会がここに勃発。ネチネチとネチネチと、
逃げたしたくなるメンバーだが成実から帰るんじゃねーぞオーラが発せられており、その場で耐えるしかなかった。

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