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「景吾ぉ!今日の放課後部活休みなんでしょぉ?一緒に帰ろぉ?」 部室のドアが開いた。 何というタイミングか。富布里も跡部を放課後デートに誘いに来た。既に成実が先約を済ませていると言うのに…無駄足だったな。しかし只今、富布里の言うことはゼーッタイ状態にあるため前言撤回される事になる。いつもなら成実は跡部以外で行こうと無情にも言うだろう。しかしだ、今回は跡部に奢ってもらうという使命がある。男には譲れないものがあるのだ。 「富布里さん。申し訳有りませんが、跡部のご子息とも今日の放課後、遊んで帰ろうとしているのでまたの機会にしてくださいませんか?」 「はぁあ?ぁたしが今日景吾と帰るって言ったら帰るのぉ!ね?景吾ぉ、今日ね公園に来てるクレープ屋さんがぁ。カップル限定のラブラブクレープを売り出すんだってぇ。ぁたしぃ、それぉ景吾と食べたぃなぁ?」 跡部に近付いて腕を絡めて上目遣い。 あざといねぇ。 「………っ。」 無言を貫き、地味にあらがう跡部。少々哀れである。目が必死に助けを求めている。 「ではこの皆さんと行きませんか?跡部のご子息以外にも一緒に帰ろうと約束をしていたので。」 「えー!?二人きり………あ、やっぱりみんなで行こぅ?みんなが居た方が楽しぃもんね!」 否定しようとしていた富布里だが、跡部が本命であるが逆ハーを狙っている為、成実が提案したものの方が限りなく富布里のメリットが大きい。すぐに考えを改め、みんなで行くことに納得した。 反面、みんなで、と言うところに跡部以外のメンバーの顔が引きつった。どれだけ嫌がってるんだ。遠目にしてたら可愛いよ富布里。喋ったら残念だけど。 「では富布里さん。本日の放課後4時に校門前まで来て下さいね?」 「はぁい!」 ルンルンと言った感じだ。ツインテールの髪が跳ねる。当たったら絶対痛いんだぜ、あれ。 「藤ケ院ー…お前、なんであいつ誘うんだよ。」 「あ?ダメだった?」 「だってあいつの雰囲気…気分悪ぃぜ。」 「ンフフー…そっか。富布里同行に反対の人挙手ー。」 スッと手が上がる。滝と日吉以外。 「おふぅ…嫌われてるな…。」 嫌われ娘は他に来るのに、どうなるんだ。 「僕は成実の意見を尊重するよ。」 「流石お滝、好き。」 「はいはい。」 「どうせ俺の意見は無視するんでしょう。始めから同意しときますよ。」 「ヒヨちゃんッ好き!」 「キモイです。」 「俺様も好きだぜ成実!」 「はいはい。と言うわけで富布里も行くから。」 決定事項な、と成実は笑った。楽しそうで何よりである。 |
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