汝は悪女の深情けなりや? | ナノ


011


「景吾ぉ!今日の放課後部活休みなんでしょぉ?一緒に帰ろぉ?」

部室のドアが開いた。
何というタイミングか。富布里も跡部を放課後デートに誘いに来た。既に成実が先約を済ませていると言うのに…無駄足だったな。しかし只今、富布里の言うことはゼーッタイ状態にあるため前言撤回される事になる。いつもなら成実は跡部以外で行こうと無情にも言うだろう。しかしだ、今回は跡部に奢ってもらうという使命がある。男には譲れないものがあるのだ。

「富布里さん。申し訳有りませんが、跡部のご子息とも今日の放課後、遊んで帰ろうとしているのでまたの機会にしてくださいませんか?」

「はぁあ?ぁたしが今日景吾と帰るって言ったら帰るのぉ!ね?景吾ぉ、今日ね公園に来てるクレープ屋さんがぁ。カップル限定のラブラブクレープを売り出すんだってぇ。ぁたしぃ、それぉ景吾と食べたぃなぁ?」

跡部に近付いて腕を絡めて上目遣い。
あざといねぇ。

「………っ。」

無言を貫き、地味にあらがう跡部。少々哀れである。目が必死に助けを求めている。

「ではこの皆さんと行きませんか?跡部のご子息以外にも一緒に帰ろうと約束をしていたので。」

「えー!?二人きり………あ、やっぱりみんなで行こぅ?みんなが居た方が楽しぃもんね!」

否定しようとしていた富布里だが、跡部が本命であるが逆ハーを狙っている為、成実が提案したものの方が限りなく富布里のメリットが大きい。すぐに考えを改め、みんなで行くことに納得した。
反面、みんなで、と言うところに跡部以外のメンバーの顔が引きつった。どれだけ嫌がってるんだ。遠目にしてたら可愛いよ富布里。喋ったら残念だけど。

「では富布里さん。本日の放課後4時に校門前まで来て下さいね?」

「はぁい!」

ルンルンと言った感じだ。ツインテールの髪が跳ねる。当たったら絶対痛いんだぜ、あれ。

「藤ケ院ー…お前、なんであいつ誘うんだよ。」

「あ?ダメだった?」

「だってあいつの雰囲気…気分悪ぃぜ。」

「ンフフー…そっか。富布里同行に反対の人挙手ー。」

スッと手が上がる。滝と日吉以外。

「おふぅ…嫌われてるな…。」

嫌われ娘は他に来るのに、どうなるんだ。

「僕は成実の意見を尊重するよ。」

「流石お滝、好き。」

「はいはい。」

「どうせ俺の意見は無視するんでしょう。始めから同意しときますよ。」

「ヒヨちゃんッ好き!」

「キモイです。」

「俺様も好きだぜ成実!」

「はいはい。と言うわけで富布里も行くから。」

決定事項な、と成実は笑った。楽しそうで何よりである。

<< TOP >> 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -