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成実は必要以上に跡部に近づき耳元で囁いた。 「だって私、神様に愛されているのですもの。フフアハハハッ!」 跡部がその発言に驚き硬直している間に成実は跡部からクルクルと舞うように離れた。その様子は無邪気に楽しむ童女。可憐なものに表された。 「あ、ちなみに僕は成実の加護を受けてるようなものだね。いつも一緒にいるし。」 「さぁ、萩之介。練習に戻りましょう?」 「はいはい。跡部も硬直せずに早く戻っておいでよ。」 マネージャー室のほぼ目の前に放置された跡部。再び富布里の餌食になるのか、否か。 「………成実…近、近かった!これは…求婚なのか?いや、落ち着け俺!あの成実が、成実が!」 …大丈夫だろう。今の跡部は気持ち悪いから。 部活も事件はなく、終わった。確かに良いことではあるがトリップ娘が何もしてこないことを考えると、刺激が無くてとてもつまらなかった。学校から成実と滝は迎えに来た車に乗り込み帰宅。 「お萩、約束が違うぜチクショー…。」 「何のだい?」 「車で帰るなんて!俺はヤだって!」 「部活でへとへとな僕に歩かせるの?」 確かにマネージャーをする代わりに帰りは徒歩を希望していた成実。しかしどうだろう。今は滝と二人仲良く車に乗って帰っている。 「俺だってお前と帰るからって事で車…寄り道……買い食い…。」 「部活のない日にすればいいじゃん。毎日部活はないよ。」 「ホントか!?」 「ホント、ホント。部活無い日は僕も暇だしつき合えるよ。それに君が望んだら跡部達も寄り道に付き合ってくれるから。」 「おー!ご子息かぁ…金持ってそうだよな…。」 「跡部の趣味は部員に何かを奢ることだよ。」 「よし分かった。今度ご子息誑かして何か奢ってもらうぜ。」 「あ、その時は僕のもよろしく。」 二人になると悪巧みを始めるのは何かの性なのかもしれない。 「ごっ子息ぅうイェア!」 宣言通り成実は放課後の部活がない日の朝練の時、部室に居た跡部に話しかけた。 「成実から話しかけてくれるなんて珍しいじゃねーの!なんだ?」 「…跡部、それは不憫言うんやで。」 「今日寄り道して帰ろうぜ!」 成実の発言に跡部その他の部員。岳人、ジロー、忍足などから賛成の言葉が聞こえた。しかし跡部の口からは同意の言葉が聞こえなかった。 「寄り道だぁ?」 「そうそう!ゲーセン行ったりマック行ったり!」 寄り道するの夢だったんだ。とキラキラさせながら言った。 「ゲーセン?マック?…ってなんだ?」 「は!?」 信じられない言葉を聞いた。知らない、だと? 「まぁ、成実が行きたいというなら例え火の中水の中、どこだって行くがな。」 「ちょ、え?お萩、え?ご子息って…。」 「あー、跡部ってこれでも箱入り息子だから。送り迎え車とかジェット機だから。」 「ご子息!それは人生損してる!って言うかお前等誘ったこと無いの!?」 「いや、俺らが誘っても跡部がただ単に乗り気やなかったんや。ひぃさんが誘ったから今回乗っただけやで。」 愛されとるなー。と忍足が言ったがその辺りはシカト。 「俺ら何気に跡部と帰るの初めてだな。」 「そうだねー。跡部に奢ってもらうC!」 あ、やっぱり跡部ってそう言う立場なのね。 |
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