汝は悪女の深情けなりや? | ナノ


008


もう少しで終わり。
キリの良いとこまで踊りきれるか。とちょっとテンションあがっていた。上がっていたんだ。しかしそれは過去形だ。終わりまで踊ることが出来なかった。何故なら富布里が戻ってきて邪魔をしたから。

「ぁー!成実ちゃん遊んでるぅ!ぁたしが一生懸命仕事してたのにぃ…。」

第一声がそれか。お前がソファーでサボってる間誰がドリンクを作ったと思ってるんだ。イーヴンだろ、イーヴン。つか遊びじゃねーよ。練習だ。

「申し訳ありません。富布里さんが私のシューズを履いていったため私がコートに行ってサポートする事が出来ませんでした。」

「もー。もぅ少し考ぇたらぁ?洗濯物するとかぁ。データまとめるとかぁ。」

「洗濯物は専門の業者が来て下さいます。データの方は個人で纏めることになっていますので。」

「はぁ?何でぇ?」

「何で、と言われましても…。勉強していて先生に配られたまとめと、自分でまとめたもの。どちらが自分の為になりますでしょうか?と言うことですよ。多分。」

「へぇ、ぁたし知ってるよぉ。それ詭弁って言ぅんでしょぉ?マネが仕事したくないって言ぅ理由ぉ立派な理由くっつけてぇ。こんなに毎日遅くまで練習してる選手にそんな事までさせるのぉ?効率性が無ぃんじゃなぁぃ?」

「確かにそうかもしれません。しかし一介のマネージャーに今までのシステムを変えるほど権限はないので私は何とも言えません。」

「じゃぁ任せてぇ!ぁたしが変ぇてぁげるねぇ。ぁたしの言ぅことゎみーんな聞いてくれるんだから!」

「それは…それは頼もしいですね。」

「ぇへへ!成実ちゃんもぁたしのゅぅことぉ聞ぃてくれてたら悪ぃょぅにしなぃからね?」

「…心得ましたよ。富布里さん。」

ウゼー。この女ウゼー。なんでわざわざ仕事増えるような発言してんだよ。外見だけでも気に入った俺が馬鹿だったぜ。しかし馬鹿だ馬鹿と思ってた富布里が詭弁なんて言葉を知ってたとは…特典、か?うわ、これまた面倒臭いぜ。

「じゃあ梨子はみんなの応援してくるねぇ!成実ちゃんはデータをまとめておいてね。」

「あ、富布里さん。」

「なぁに?」

「明日からは運動靴なり何なり持ってきて下さいね。そのアンバランスな姿、実に滑稽ですよ?」

とりあえず、嫌みを言う位良いだろ。本当は退部させてしまいたい…と言うか強制送還したいとこだが我慢だ。

「なッ、…分かったぁ。忠告ぁりがとぉね?」

富布里は少し起こったようだが、すぐにぽわんとした雰囲気に戻った。成実は再びその姿を見送って沢山の試合のスコアを纏めている資料棚に向かった。

「…いや、データだけ見ても分かんねぇから。」

バスケとかだったらチームプレイである程度纏めることは出来るだろう。どんなフォーメーションでどんな学校にどんな効果を得ることが出来るのか、とかスコア表をとか見れば分かるけど。

個人競技でデータとか…無いわー。俺がそんなの分かるわけねーし。テニスとかお萩とピヨちゃんが上手いぐらいしか知らねーよ。そんなの立海じゃレンレンが全部やってたしなー。…よし、踊りの練習を続けよう。
言うことを律儀に聞かなくてもいいだろう。もしとやかく言われたらそれなりに言い逃れよ。

「ほぉら、景吾ぉ見てぇ!やっぱり成実ちゃん遊んでるぅ!ぁたしの言った通りでしょぉ!」

「あふん。」

練習し始めて数分後、富布里は帰ってきた。しかも跡部を引き連れて。ビックリした。変な声出ちゃった。恥ずかしー。

「ねーねー景吾からも言ってよぉ。これじゃ邪魔になるだけだしぃ。マネは梨子一人でも良いじゃあん。」

「跡部のご子息…。」

は俺の味方だっつーの!残念だったな富布里。ファンは俺様を裏切らない!あー、でもこんな早く対処したら面白くないし、まだ序章の序章だし。そうだ。ご子息達、地味に言うことを聞かないといけない体質になってるっぽいし、利用出来るか?つか遊んでねーし、練習だし。次の演目だし。おい富布里見て見ろよ。ご子息の顔を。演目のだっつって分かってる顔してるじゃねーか。ワンモアプリーズって顔してるじゃねーか。しかし、一瞬だけ見て理解したご子息もなかなかにキモいな。

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