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「僕達は予定があるからまた明日ね。」 不二が痺れを切らしたかのように三人をあしらい撫子を連れて校舎の中に入って行った。 そして一番近かった教室へ入る。 「よし…じゃあ、撫子さん撮影会を始めようか。」 「イエッス!」 撫子はウイッグをかぶり一護モードになる。 目つきが悪いってホント男子キャラをするのに便利だよね! 撮影会開始、不二はパシャリパシャリと絶妙なタイミングでシャッターをきる。柳生のようにひっきりなしではない。不二は確実に撫子の動きを捉え、風の流れを読みシャッターをきる。 心地よいシャッター音が教室の中に響く。そんな中ガラっと教室の扉が開く音がした。 撫子と不二は驚き、開いた扉の方向に目をやると制服姿の背の小さい少年が不機嫌そうな顔をして立っていた。 「ねぇ不二先輩、人の教室で何やって…撫子さん!?」 「え!?君、誰!?仙人掌さんの知りあベェッ!」 少年は撫子に抱きついた…と言うより突撃してきた。 「会ってみたかったっす!」 「え!?ちょ、ホント誰、誰誰ぇ!?いや、君のことを拒絶してるわけじゃないんだよ?むしろ君可愛いから私の萌えポイント的確にぶっ刺してるから、いやマジホントマジ可愛い。なんで君そんなにちんまいのぉぉおぉ!?」 「撫子さん、撫子さん落ち着いて。」 不二が撮影を中断し撫子をなだめ始める。このまま撮影を続行したら鼻の下が伸びきっているような一護を撮るはめになる。そんなのは一護ではないそれはコンだ。 「仙人掌さん、助けて、こんな素敵な少年が目の前にいるんだけど?」 「それはね越前リョーマっていう僕の部活の後輩なんだ。」 簡潔に教える。むしろ沢山情報を与えても撫子の今の脳内では右から左に受け流すだけ。 「へー君、越前君って言うんだ。」 「リョーマって読んで下さいっす!」 「リョーマ君!」 リョーマは自分が望んだように名前で呼ばれたのにブスッと顔を膨らます。 「やだっ、そんな顔しても可愛いじゃないの!」 「呼び捨てで呼んでほしいっす…。」 少し照れくさそうに言う越前少年。 「グハァ!今なら跡部に跪いても良いかもしれないっ。」 実行に移す気などこれっぽっちもないが。 「ねぇ、越前。君はなんで撫子さんの事知ってるのかな?」 「…コスのコミュニティーでずっと見てたんす。」 あからさまに不二に対して顔を歪める。 自分と撫子だけの空間を侵すなと、 「リョーマもコスするの!?」 「いや、見る専っす。…俺身長が低いから。」 シュンとした顔になる。 「可愛いじゃないのぉ!大丈夫、その身長なら戯言のリアル人識が出来る! つか身長なんて気にすんな、これから伸びるから!成長期なんてこれからだから!!むしろ伸びないで、私の好みのドストライクだから!!」 ギューッと撫子はリョーマを抱きしめる。 「俺この身長に初めて感謝したっすよ。」 嬉しそうに顔が緩む。 「……越前って…こんなキャラだったっけ?」 部活の越前は無愛想で、クールで近寄りがたい存在なのに今のリョーマはそんな面影など一切無い。 愛想がいい顔で、テンション高く、母性本能がくすぐられる存在だ。 撫子はもう表情筋がダルンダルンに伸びてリョーマを抱きしめ撫で回す。 「可愛い可愛いマジ可愛い。こんなちっちゃくて可愛い中学生なんて居たんだ…。」 岳人が限界だと思っていた。 |
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