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「あっれー?不二先輩じゃないっすかー。」 撫子と不二が振り返る。 そこにはスポーツ刈りをしたテニスバックを背負っている男子と、ほっぺに絆創膏をはっている男子、そして前髪が触覚のように二本になっている男子が居た。 「不二ー不二ー、何してんの?」 「不二じゃないか、どうした?今日は用があるからって先に帰ったはずじゃ…。」 「桃に英二に大石…用事って言うのはこの人をモデルに写真を撮ろうと思ってね。」 誰だお前ら?え、パンピ男子がいっぱい居るよー怖いよー。 と少々初対面のこともあり撫子が固まっていると不二が助け船を出してくれた。 「あぁ、紹介するよ。 僕の部活の後輩の桃城武、同じクラスの菊丸英二、で英二とダブルスを組んでる大石秀一郎だよ。」 「あ…ども。」 撫子は無愛想に返事をする。 何故なら脳内で活発に妄想をしていたから。 やっぱり後輩キター!!ダブルスペアキター!! 後輩…なんて健康的な男子なんだ。見てるこっちが眩しいぜ。 あれだ、絶対こいつ初恋のはの字も無いんだぜ。いや無いと信じてる。これだけ無知そうだといじめたくなりますよねー。 うん、とりあえず桃城君は今んとこ右で、おk。 ダブルスペア=CPという方程式は覆させねぇ。…うん、きっと大石×菊丸か?けど…菊丸と仙人掌さんは同じクラス…。仙人掌さん…が右? 「僕で妄想しないでね?他の人は良いけど。」 おっと、やっぱり仙人掌さんも滝や幸村君と同属性でしたか。もう驚きませんよー。私が仲人になって三人を友達にしてやろ。妄想は出来なくても美人さん達が集まってたらそれはそれで目の保養。 「うん、それ位なら良いよ。滝君や幸村君を早く紹介してね?」 はーい了解しましたー。 一々口に出さなくてもいいって便利ー!これを自暴自棄と言うんですね、知ってた! しかし、大石君が…何故触覚が生えてるし!!もう少しマシな髪型プリーズ……あ、今ウィッグ持ってるや。 不躾に大石をガン見する。 「あの、何か俺の顔に?」 撫子は鞄からオレンジのウィッグを取り出した。 「大石君…これ少し頭にかぶってみないかい?」 「え?これ?」 撫子とウィッグを交互に見る。 「なになに?大石それ被るの?」 「面白そうじゃないっすかぁ、被ってみて下さいよ!」 大石は乗り気ではないが、周りの二人は他人事だと思ってかなり乗り気だ。 「うーん、そんなに言うなら…被ってみようかな。」 おk把握。 と撫子はウィッグを大石にかぶせる。そして妙にイケメンな男子が完成した。 「お、…おぉ。」 「大石先輩カッコいいじゃないっすか!」 「大石ー、そんなイケメンだったのかにゃ!?」 心底びっくり、こんなにイケメンになるなんて予想を遙かに超えていた。 不二はカメラのシャッターをきる。GJ。 「…そうなのかい?鏡無いから分からないや。」 撫子は黙ったまま鏡を取り出し手渡した。 「ありがとう。」 手渡された鏡を覗き込む。 「うわ、髪型だけでこんなに変わるのか!?」 「フフ、大石驚きすぎだよ。」 「大石君、髪のばしてみれば?」 「うーん、そうしてみようかな…。」 真剣に悩む大石。 「ダメだよ、大石。そんなの個性が無くなるよ。それにほら、イケメンなら僕が居るし。」 ヒューっと冷たい風がふいた…気がした。 「ハハハ…そうだよね。これ、ありがとう。」 と撫子にウィッグを返す。 その姿はどこか切なかった。 |
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