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撫子はそれに応えて一礼。おしとやかな姿は完璧だ。 何故かって?先生方の前では何時もおしとやかに過ごしているからだ。 「えっと…皆様、球技大会お疲れ様です。その、疲れているのに忍足君に集められて私なんかのためにここに集められて…すみません…。」 撫子は悲しそうに目を伏せる。 「そんなこと無いです!」 誰かが言う。 それに続いて声があがる。 「ありがとうございます。」 にこりと微笑む。 うおー!!と体育館の中が騒がしくなる。 「それで、忍足君から代表としてAブロックで優勝したクラスと準優勝したクラスをお祝いしてほしいと言うことなので、優勝したクラスからステージに登ってきて下さい。」 優勝した撫子のクラスが登ってくる。 男子は撫子をガン見しながら、女子は辺りをキョロキョロとしながら。 「…どうしたのですか?」 キョロキョロしている女子に声をかける。 「いえ、あのお姉様が…居なくて……。」 「お姉様?どのような方なのですか?」 前からどの様にファン達から見られているのか気になっていたから聞く。 「とても素敵な方なのです! 身長も高くて、包容力もあって…憧れのお姉様です!」 「そうなのですか。」 「それだけじゃねーっす!男らしくて、懐のデカいかっこいい姉御なんす!俺らが姉御を妬んでいた時の事なんて水に流してくれたんすよ!」 感涙だ。 そんな風に思ってくれているなんて、 「では、改めて祝福の言葉を。…優勝おめでとうございます。これからもクラス一丸となって学校生活を過ごして下さい。っと、今日一番頑張っていた男女一人ずつこちらに来て下さい。」 撫子が言うとクラス内で話し合い始めた。 少し時間がかかっている。 撫子はその間にフロアの方に向かって手を振ったり、投げキッスをしたり、ファンサービスに努める。 目を自分のクラスの方に向けると話し合いが終わったようで、二人前に出てきた。 撫子に一番に謝ってきた男子と、撫子が髪の毛引っ張られているところを助けようと走り出した女子だった。 しかし、女子は納得できないと言った表情だった。 「どうか…しましたか?」 「あの!…私が一番頑張ったわけではないの、お姉様が一番頑張っていたの…けど、ここには居なくて。」 撫子は泣きそうになった。 ここまで思われていたなんて想像もしていなかった。 「その方はきっとあなた達の声援が一番喜びますよ。」 そらそうだ、何が悲しくて自分自身で叱咤激励しなければならないのだ。 撫子はマイクを切って二人に近付く。 「二人にまず私の秘密教えてあげる。」 キョトンとした顔になる二人。 「私だよ私、椿崎だよ。」 地声に戻す。 二人は驚きのあまり声すらも出ない。 「またまたぁ、そんなにびっくりしなくても…蒼の貴公子と同時期に出てきた桃の姫君なんだから疑わなきゃダメでしょ?」 ハッとした顔になる女子。 さらに顔が赤くなる男子。 「あらぁ?ちょっと君、マジで桃の姫君に惚れてた?」 「……姉御…!」 「私、男らしいだけじゃないんだよ?ゆーしー?」 コクリと頷く。 「これからも私をよろしくね?」 二人は頭がとれるのではないかと思うくらい頭を縦に振る。 「これからクラスとフロアに降りたら他のクラスにも私だって事バラしていってね。」 |
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