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敵チームの内野ボール。 撫子は避けようと敵の外野に近づいていたら外野の一人の男子にポニーテールの根本をひっつかまれた。 「っつ!?」 「お姉様!」 撫子が髪を掴まれたことに気付いた女子が助けに行こうと撫子に駆け寄ろうとするが足がもつれ転けてしまった。 そんな彼女は恰好の的。彼女は体を丸めて防御に入るのが精一杯だ。撫子は護ると誓った手前、護ろうと力一杯駆け出す。 敵の拘束から逃れることは出来たが、髪の毛が解けてしまった。長い髪が宙を舞う。 そんな事は気にせずに撫子は彼女にボールが当たらないようにと身を挺してかばうことにした。駆け寄ることは容易いがボールをキャッチ出来るような体制に持って行くことは難しい。撫子は次に来るボールの衝撃に構え目をギュッと瞑る。 しかし、一向に衝撃はこない。 不思議に思って目を開けると特徴的な丸メガネが地面に叩きつけられていた。 忍足が二人を庇っていたのだ。 「っあー…顔面やけん、セーフやろ。」 信じられない…と撫子が目を見開く。 この男、二人を守ると同時にクラスのポイントを減らすまいと自ら顔面セーフを狙った。忍足も咄嗟の事でボールをキャッチする体制を整えるまでの余裕はなかったらしい。 「ぁ……ぁ、あぁ…忍足ー!!」 撫子は叫んだ。どうしてこんなことになってしまったんだと。 「気にせんとき、…撫子にばっかカッコええ事ばっかさせへんで。」 「こんなの…こんなの絶対おかしいよっ!」 と撫子が大事そうに抱える忍足 のメガネ。 「オイ!!」 「忍足っ忍足…ぅあーっ!!アハハハ。」 「なんしょん撫子!今めっちゃシリアスな場面なのに何ちゅーことしてくれるん!?」 「私が易々と他人のカッコいいしぃをオンエアさせると思ったら大間違いですから!爪が甘かったな!銅40グラム、亜鉛25グラム、ニッケル15グラム照れ隠し5グラムに、悪意97キロで私の暴言は練成されている。メガネが宙を舞わなかったらこんな展開にはならなかっただろうに。」 「くっそ!こんなに伊達眼鏡憎んだん初めてや!!」 「伊達眼鏡だったのか!?ちょっ後でkwsk。」 妄想が駆り立てられるぜ。 「さて…オイタしすぎじゃろ?3A男子諸君、髪が解けちゃったじゃんかよ。」 と髪をかきげ挑発的な表情をする。 「氷帝ルールって基本男子が女子を狙っちゃだめってあるんじゃろぅ?何狙ってくれとん?私は良いけど私の子猫ちゃんを。 どう落とし前つけてくれるんかな?ん?」 長い髪の間から見える相手を鋭く睨みつける。 怖いです。撫子さん、マジ怖いです。 当事者の男子は震えが止まらない。 「あー、ほんっと怒ったわ。顔面に当てるだけなんてそんな生ぬるい事は止めだ。駆逐してやんよ。一匹残らず駆逐してやる!!」 と、世にも恐ろしいお仕置きの時間が過ぎまして…ついに撫子のクラスは優勝した。 3Hは心の底から喜んだ。何故か3A女子も喜んだ。というより全校の女子が喜んだ。3A男子を始めとするギャラリー男子は恐怖で顔が真っ青だ。 「っふ…。勝った。」 しかし不本意である。 何故なら恐怖で人を締め上げてしまったのだから。 「おぅお疲れさん!」 「おぉ忍足もお疲れ…。」 「なぁ、撫子。この状況は本意か?」 「いんや不本意。 どうせなら男子共全員を舎弟と言う名のパシりにしたかった。…慕って欲しかったかな。」 「さよか、やったら俺が変えてやるわ。」 「え?出来るの?そんな事…。」 「俺を誰やと思うとるん?氷帝の天才やで。 つーわけで撫子も協力してや。閉会式の後体育館の舞台袖行き、滝が居るから。」 「?…とりあえず分かったわ。」 |
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