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「侑士君とは…良い友人ですよ。唯一無二の…、ね?」 「…あ、あぁせやなぁ。」 「で、この頬はですね…。」 チラリと忍足を見る。 「侑士君を放っておいて跡部君達と談笑していたら、一段落会話が途切れたときに侑士君が俺を責め立てるように殴ってきたんです。痛かったなぁ、侑士…もうおいたはしないでくれよ?」 間違ったことは言っていない。 とどめと言わんばかりに忍足の顔に自分の顔を近付ける。 忍足は顔の筋肉がひきつらせながら体を反らす。 これがまた女子達の妄想が駆り立てられる。 いい感じの連鎖だ。 「っと質問はこれだけですか?」 「え…あ、えぇ、ありがとうございます。」 ぽーっと二人を見つめていた会長はなんとか現実に帰ってきた。 「じゃぁ、次は俺が質問。君、テニス部の中で誰が好きなの?」 ずいっと顔を近づけ目を直視する。 なんか、良い香りがする気がする。香水ではない…良い香りが。 「あ…の、跡部様が…。」 「そうか…残念だな。跡部君に負けるなんて。あんな高飛車な奴止めて、俺に惚れてみない?」 会長の腰に片手をやり、支え。 片手で会長の顎に手を添える。 暴走し始めた撫子。 仕方ないことだ、今まで抱きつきたい衝動にかられながらも冷静に演技していたんだ。 少しずつ撫子と会長の顔の距離が短くなる。 「ちょっ止めぇ!!」 見ていて恥ずかしくなった忍足が撫子の頭を横からはたく。 「「「「「「「「……あ?」」」」」」」」 その場の空気が凍った。 何故ならウィッグが落ちてしまったのだ。 撫子の長い髪が垂れる。 「えっ?え!?」 パニックに陥るファン達(文芸部を除く)。 「…忍足貴様ぁ…。」 地を這うような低い声が聞こえた。 現在撫子はげきオコスティックファイナリアリティぷんぷんドリームである。 「っ堪忍!」 「万死。」 親指で首を切るジェスチャー。 バラすタイミングを誤ってしまった。もう、正直に言うしかない。 「はぁ……騙してごめんね? でも、私は君達と仲良くなりたかったんだ。この位君たちに媚び売っとかないとテニス部マネージャーっていう先入観が取れそうになかったんだもん。」 君達予想に反して可愛いんだもん。 ファンクラブなんて言うからケバい奴らの集まりかと思ってたのに。 始めは跪いて足をお嘗め的な勢いで計画を進めてきたけど予定変更。仲良くなって一緒に萌えを共有したい。 「これだけははっきり言っとく。 私が書いた作品を見れば分かるけど彼らは私にとっての妄想対象だ。間違っても恋愛フラグなんてたちません。立ったとしても俺には嫁が居るのでそんなフラグはへし折ります。」キリっ よほどショックだったんだろう。 ファン達は微動だにしない。 「……あの。」 小さな声が聞こえた。 「ん?何だい?」 「お姉様って呼んで良いですか!」 「ん?」 これ、何回目のデジャヴだ? |
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