057 |
撫子は火がついたように怒り出す。 跡部の胸倉を掴みあげ睨み、 思いを、我慢していた思いを吐き出す。 「苦労してんだよ…本当にさぁ!!あんたに…あんたなんかに何が分かんの?私とアンタはスペックが違うの。私は女子のくせにまだ中3のくせにこんなにでかい背でさ。この身長だってコンプレックスでしかなかったんだ。これのせいで昔はずっと猫背で、根暗でいつも自信なさげで周りになんて誰もいなかった!今ではもうこの身長は才能の一つだって言ってくれた人がいるから胸を張って生きてるけどさ。アンタは自分の容姿でコンプレックスになったことなんてある?無いよね。いつも人気者で、いつも周りには誰か居て、格好良くて、テニスも強くて、スペックがチートな最強夢の主人公みたいなあんたに……何も知らないあんたに気にくわれてたまるか!!知ってるよね。男子テニスマネージャーになったら嫌われ夢みたいなイジメがふりかかるって、みんな知ってたよねぇ?」 撫子がいきなり周りの人達に訴える。 確かに知っていた。周知の事実だ。今までも見てきていた。その度にマネージャーが変わった。マネージャーが変わる事なんて気にして何ていなかった。定期的に変わることが当たり前すぎて。 その上、撫子がイジメられているという雰囲気ではなかった。だからイジメられていないと思っていた。 「私は例外としてイジメられないなんてもの無いからね?ねぇ、忍足。」 「せや。マネージャーになってすぐ無視されるようになった。」 「無視ねぇ…それだけですんですると良かったのにね。ったく、イジメていいのはイジメられる覚悟のある奴だけだってーの。」 「まだあったんか!?」 「あるある。まじ余裕で。呼び出しなんてほぼ毎日飽きもせず同じように真っ白な封筒に剃刀をくっつけて、剃刀レターが毎朝靴箱に入れられてさぁ。テメェの靴箱にも剃刀レター突っ込んでやろうか!?それとも白ジャムがいいか!精神的に肉体的に社会的に徹底的に完全的にテメェを虐め抜いてやろうか!?ぁあ!?まぁ、なんだ。それは別の話だ。 さぁお前ら私が部活に遅れた回数言ってみろ。」 「…一回。」 「はい、岳人良くできました。 私が遅れたのは文芸部に行った日だけ。ここまで言えば分かるよね?ブッチしてきた。そしたらイジメはエスカレート。教科書なんてどっか行ったし授業は受けようがないし…流石に焦ったよ。まぁするこには困らなかったけどね。知ってるか?人間こんな生活耐えらんないんだぜ?家には誰も居ない、学校ではイジメられる。部活は絶対に言えない、サイト友達はいるけどこんな重い話できるわけ無いじゃん。だから自分の力を出来る限り発揮して、この現状を変えようって努力してきた!他にも頑張ってきた。私いっつもやることはやってたよね?私の居場所を最低限確保するために。学校での居場所は無いから部活で死守するために!!いっつも妄想はしてたけど、やるべきことはやってたよね?タオルもドリンクもちゃんと用意してたよね?必要だったら球出しも、アドバイスも、マネージャーの身分でやれることはやってきたよね?否定する人も居たけど今は仲直りした。自分の居場所をちゃんと作ってきた!今日、やっとイジメに終止符が打たれて楽しい生活が送れると思ったのに…今度は辞めろってか。やっぱりテニスをやってる奴は自分勝手の自己中でろくでなし共なんだな!!クソ野郎!!」 言いたくないことまで言ってしまう。 止められない、自分の口が制御できない。壊れたダムのようだ。誰か止めて、修理して、私を黙らせて。 「撫子やめぇ!!」 忍足が叫ぶ。 撫子はびっくりして言葉を途切る事に成功した。 自分が言った言葉達に驚き跡部の胸倉を手放す。 腰が抜けたように座り込む。 「あ…あ、ごめん…。 変なこと言っちゃった…さっき言ったこと気にしないで、ただの戯言だから。うん、ごめん。 何でこんなシリアス展開になってるわけ?私はギャグ至上主義だっつーの。……仕事してくる。」 撫子は立ち上がり逃げだそうとした。 しかしそれは叶わなかった。 忍足や岳人、ジロー、宍戸、滝、日吉、鳳、樺地に腕を手を掴まれていた。 「ほんと、ごめんって。暴言吐いてごめんって、反省してるから。そうだ、私がここ辞めれば丸く収まるかな?」 「辞めないでほしいC!」 ジローを筆頭にそれぞれが言う、辞めないでと。 |
<< TOP >> |