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「では、さらし巻くの手伝え。」 「え゛。」 思い出される悪夢。 「協力しろよ。私がイジメにあってる原因はお前が発端だぞ。」 そう言われると立場のない忍足。 「……しゃーないなぁ。 でも撫子一つ約束してくれへん?」 「なんざましょ?」 「もうシエルはやらんといて。」 寿命が縮まるねん、と切実な願いであった。 「おk把握。 今回は発声の練習をしとくよ。半日声色を変えるのは初めてだから。じゃ、部室に行こかー。」 二人は部室に向かう。 撫子はTシャツと短パン姿というラフな格好になりその上からさらしを巻いてく。 「っはー、いつ見てもいい感じの足やなぁ…。」 「……忍足逮捕ー。」 一度巻いたこともあるようで忍足は手際よくさらしを巻いていった。 「あーあーぁあーあああーぁあーああっ あ゛ん。」 忍足がきつくしようと力を込めたらとっさに出てしまった変な声。 「おいコラァ!喘いでんやないで!」 「ごめんごめん今の事故。発声止めとくよ、うんごめん。」 「ほんま気をつけてぇな。 これから絞めていくでぇ覚悟はええか?」 「ええよ。」 ぎゅっぎゅっと絞めていく。 「っん……ぅん……ふ…ん。」 だがしかし、声を無理やり押し込める方が大変なことになった。 「…撫子…それわざとか?」 「は?何が?私めっちゃ我慢してるよ?」 さらに無自覚ときたもんだ。 「巻き終わったで…もう、もう二度とさらしなんぞ巻かんからな!」 「え!?ケチー!」 「ケチでも何でもええ!」 「ちぇ…だったらBホルダー買ってよ。」 「…買ったるから、もう巻かんで……。」 「っしゃあ!やりぃ!あれ地味に高いんだよ。さて着替えますか。忍足ジャージ貸して!!」 「はいよ。」 「グラーツェ。」 撫子メタマルフォーゼ。 ジャージを着て、メイクをして、ウィッグを付けて、、KAITOの完成だ。 「さて、この姿のままマネージャー仕事するから。私のことはKAITOって呼んでね?」 「分かった、分かった。バレんように頑張りやー。」 「私がそんなヘマするわけないっしょ?バラすならカッコよく!じゃ、ドリンク作ってくるよ。」 と撫子が部室を出ようとしたら、忍足以外のレギュラー陣が入ってきた。 少し驚いたがここでヘマをするわけにはいけない。 「…ん゛ん…これはこれは皆さんお揃いで。」 「!?蒼の貴公子!!」 跡部から貴公子と言う単語が出てきて思わず吹き出しそうになったが、こらえた。 「フフっ…蒼の貴公子などと…俺はそんな大層なものじゃないよ。KAITOです。そこに居る侑士君の友達です。ねぇ?侑士君。」 「せや。」 「おい、椿崎はどうした。」 「椿崎さんなら、今日は…遅れてくるようです。代わりに俺が椿崎さんの仕事しますよ。」 滝がさっきから小刻みに震えている。 笑いをこらえているのだろう。 「そんな、見ず知らずの人に頼むだなんて、また僕が撫子の代わりをするよ。前もしたことあるしね。」 滝 様 マ ジ 勘 弁。 「いえ!俺がします!頼まれていますし、ではもう練習が始まってしまいますよね? 俺ドリンク作ってきまず!ゴホゴホッン゙ン皆さんも着替えて練習頑張って下さい!」 撫子は言いたいことだけ言って、その場を逃げて行った。喉が思ったよりも痛くなってしまったことと、これ以上滝と関わっているとろくなことにならなそうだったので逃げたのである。 逃げは恥ではない。作戦的撤退だ。 「フフフフ…面白いなぁKAITO君は。」 「くそくそ!滝め、なんで脅したんだよ。俺もっと話し聞きたかったのによ。」 「俺も聞きたかったC。」 「…俺も話によっては下剋上を。」 「大丈夫だよ。また何時でも話は聞けるから。ほら着替えて、練習始まるし今日は公開練習って聞いたでしょ、格好悪いとこ見せたいのかな?」 「ちぇー。」 「着替えて、ね?」 黒いオーラが見える。 「「ハイ!!」」 |
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