お前がやれ |
撫子が一番の至福の時間。つまり、家でネットサーフェインをしているときのことである。撫子のケータイが鳴った。画面には『幸村精市』という文字が浮かび上がった。 「なんだろう…出てはいけない気がする……。」 いつもすぐに出ているのだが、今回ばかりは何故か出たくない。 いや、出なければもっとひどい目に遇うことは明白なのだが……うん。 「頑張れ俺、ここで出なかったら……あ、モザイクかかった。セルフモザイクなう。……ハァ…はい、撫子です……。」 『あ、やっと出た。』 「…遅くなって申し訳ない。」 『ウフフフー、出るのためらったでしょ?』 「……申し訳ありませんでした。」 『うん、素直に謝るところを評価してあげる。』 「ありがとうございますぅ。」 『でねー、今回お願いがあって電話したんだけどね?』 「ん?お願い?」(どうせ命令だろうがよ!) 『そう、お願い。俺、コスプレしてみたい。』 「………は?コストプレゼンテーション?」 『違う違う、えーっと………ああ、コスチュームプレイ。』 「なんで!?」 『仁王と柳生がねー、話してる所を聞いたら俺もしたくなっちゃった。』 「で、なんで私に電話&お願い?」 『仁王がねー、撫子も巻き込んじゃれってさ!巻き込まれたねドンマイ☆』 「仁王ぉおおおおお!!テメッ、」 『でねー、俺「ヴェノマニア公の狂気」ってやつしたいんだけど。』 「え?ちょ、それレベル高い!衣装が揃わないよ!つーかほとんどが女装になるんですけど!?やるの?マジでやるの?」 『うん。衣装の方は俺が揃えるし、椿崎さんはメイク道具を持って来さえすればいいから。じゃ今週の日曜日、9時に立海に来てね?』 「イエッサー!」 日曜日 行き慣れてしまった立海大。まっすぐにテニス部部室へ向かう。そして控えめに扉をノックする。 「来ましたよー…?…!?」 「やぁ、流石椿崎さん。時間通りだね。」 「は、い…来ました…けども……ッブフ……ッ!」 ダメだ、我慢できない。腹筋が的確に痛めつけられている。笑ってはいけないとわかっているんだ。彼らはとても真剣なんだ。なのに、撫子は笑いというものがどうしても抑えきれなかったのである。 それは、何故か。撫子が部室を覗くと、そこには桃色片想い的な異様な雰囲気が立ち込めていたのだ。 いつも辛子色のユニフォームを身に纏い、片手にはラケットを握っているメンツたちがテニスをするには不適切なヒラヒラなドレスを身に纏っている。露出の高いドレスから見える肩や足はすらりとしながらも逞しい。いつもの溌溂としたオーラは感じられず、奈落の底に落ちたかのようなオーラを放っている。 もうこれは、本当、これは笑うしかない。 「ギャーーハッハッハッハッハ!!ヤバス、ヤバス、ヤバいってこれ!!みんな、最っ高!!勇気100%!!ドレスを着れるとか、男らすぃい!!」 「撫子さん、精市の言い分に逆らえると思うのか?」 開眼柳、でも女装なう。 「………実にさーせんした。私も幸村君に逆らえなくてここに来ました。」 お互いに、ご愁傷様です。 「じゃ、椿崎さん。みんなにメイクしてウィッグを被せてやって?あ、もちろん仁王も。」 「「…イエッサー……。」」 二人は作業を開始する。 因みに仁王はコスをしていない。作業がしにくいからという幸村の配慮らしい。あと柳生も、柳生はカメコらしい。柳生は分かるが、柳は完璧に逃げている。 撫子はせっせと働いて完成させる。 「あー…なんで俺らが女装してんだよ…どうぜ椿崎が来るなら椿崎がすればいいだろぃ…。」 「部長の突発的ネタっすよ。深く考えない方が身のためっす。」 「…赤也、なんか悟ってねぇか?」 「いい加減悟るっすよ。こっちネタは悟りやすいっす。」 「て言うか、赤也お前可愛い格好になったな。」 「丸井先輩こそ、ものすごく美人ですよ。」 「「…ハァ。」」 不毛すぎる会話ありがとうございます。ごちそうさまです。 「「っっしゃぁあ!!ミッションコンプリートォオ!!!」」 最後、真田にもメイクを施してどうにか、どうにかみんなを変身させることが出来た。 「お疲れ、二人とも。うわー、みんな別人だねー…ネタになるかと思ったのに、仁王と椿崎さんが本気出したら本格派になって面白くなーい。まぁいいや柳生撮っちゃって?」 「はい。」 「疲れたー…私、やるからにはやるし、中途半端にやってみんなを恥さらしにしたくないしね。うん。君達はもっと私に感謝すべきだよ。」 「…さっきさんざん笑っとったんはどいつかの?」 「シャラップ仁王。」 「よし、二人も着替えてね?」 撫子と仁王が互いに乙、と労っている最中、ついに核弾頭幸村が爆撃を仕掛けてきた。 「「は?」」 「ほら、まだ主人公と最後に出てくる男?が居ないでしょ?君達の意見を尊重してどっちがどっちの役をするとかは俺が決めないであげるから、さっさと着替えなよ。」 「待って、待って待て、幸村君は?」 「え?俺は、監督。」 「ハァ?」 「だから、か ん と く 。」 「いやいやいや、言いだしっぺの幸村君がしないの?私、今日幸村君の女装姿を見たくて来たようなものだったんだよ?え、え?なんで?」 「さっさと着替えろよ、愚民どもが。」 「「イエッサー!!」」 幸村の言うことはぜーったい。と言う訳で二人が口で敵う訳がなく、二人はたたまれている衣装を視界に入れ、どちらがどっちをするか話し合いと言う押し付け合いを始めた。 「おい、お前ががくぽしやがれ。」 「いやじゃ、椿崎がすればええじゃろ!」 「やだよ!私はKAITOの方をしたい!だってがくぽだったら仁王に刺されんじゃんか!なんか屈辱!」 「変なプライドなんて捨ててしまえ!」 「お前が捨てろ!テメェはヘタレなんだから適役だろ!?」 「おまんの方が誑かす的な意味で適役じゃろ!」 「いや、それこそお前の方が適役だから!」 低レベルな言い争うが続く。 「あー…俺、あの映像の如何わしいシーンも撮りたいと思ってるから主人公の方はみんなと絡んでもらうからー。」 爆弾発言ありがとうございます。 「撫子さささん!!!」 慌てた様に赤也が撫子に訴える。 「なに!?」 「お願いします!がくぽの方をやってください!俺、仁王先輩と絡むのは絶対嫌っす!」 「赤也君…私も最後仁王に刺されるのは嫌なんだ。」 「そこを何とか!」 「えー…私仁王が君らと絡んでいるところ見たいんですけど、かなりの勢いで。イケメン同士が絡むとかなにそれご褒美。」 「酷いっす!」 「酷くない!私の本能だ!」 「クククク…甘いぜよ、椿崎。」 「は?……!?テメェッ!」 仁王に名前を呼ばれ振り返ってみると仁王がすでにKAITOの服に身を包んでいた。 「赤也と言い争ってる間に衣装は頂いたぜよ。」 「計算してねぇぞぉおおおおお!!」 撫子は結局がくぽの方の服を着ることになった。 幸村の指示通りに動いて、最終的には演技だが刺された。その時の恨めしそうな顔がアカデミー賞物だと言われたようだ。 一通り撮影が終わって、時間が余ったと分かった瞬間に撫子は仁王にラリアットを食らわせ、倒して、マウントを取ってフルボッコ。 柳生はこのシーンも写真に撮っていたようでがくぽの逆襲として、後世に残った。 「うん、満足だよ。流石椿崎さん。」 「君が満足そうでなによりだよ。だがしかし、二度と呼ぶな。」 「却下。」 ―――――――――――――――――― 200000hit企画第10弾 市菜様リクエスト「青春デストロイで立海みんなでコスプレ。幸村発案」でした。 楽しかったですー。皆に女装をさせたことがね!しかし真田やジャッカルとか…ちょっと無理がありましたかね…?でも、ものすごく見たい…この二人の女装が!似合わない女装そこジャスティスだよ。 |
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