はよ、しねぇ |
いつもの放課後、撫子は男子テニス部レギュラー陣が使用している部室を掃除しようとおしかけた。 部室の前まで来てノックをする。 「おーい、掃除しに来たから入っていい?」 「あーたんまたんま。俺まだ着替えれてねぇ。」 「岳人がまだ着替えてんの!?覗いていい!?」 ドアノブがガチャガチャとなる。 「なっ!?バカ!やめろ!」 「あーん?俺様が着替えてるところを覗こうってのか?」 「うわ、お前もまだだったのかよ。誰々着替えれて無いの?」 「俺とー跡部とージローとー宍戸とー滝。」 「滝様…だと…やめとく。」 と5分後。 そろそろ待ちくたびれてきた。 「……………ねぇまだー?」 「あー跡部がもうちょい。」 「チッ、跡部…はよぉしねぇ!」 残りが跡部だけだと知った撫子は手のひらを返したかの如く部室のドアを蹴る。 そしてすぐに扉が開かれた。開けたのは跡部。何故か撫子を睨んでいる。 「あ?なんで私が睨まれなきゃいけねぇの?」 「……入れ。」 一言だけ言い残し奥へと入っていく。 「んだよ……チース!お掃除に来ましたぁ……あ?」 と撫子が入るとその場にいたメンバーたちがポカーンと撫子を見る。そんな彼らに撫子はキョトンだ。 「え?何なんか私の顔についてる?」 「撫子やるねー。」 「は?」 「お前が跡部に悪態をついてることは知ってたけどよ…今のは無いんじゃねーか?」 「何が無いの?」 「先輩がいきなりこんなことを言う人だなんて…知りませんでした。」 「鳳までなんなのさ!?私なんかした?全く状況が掴めないんですけど!」 あたふたと慌てる。 「貴様…よくも俺様に死ねだとか言いやがったな。」 「死ね?私そんなこと言ってないよ?」 「しらばっくれんじゃねぇ!さっき早く死ねっつったじゃねーか!」 部室にいるメンバーが頷く。言った本人である撫子はそんなこと言ったっけ?と頭を抱える。確かに常日頃悪態をついているが、そんな暴言を実際に吐いているつもりはない。無意識に吐いてしまったのか。それはそれで、問題である。 「…………あぁ、ごめん。方言出ちゃった…。」 撫子は悩み、そして思い当たる節を見つけた。そう、それは方言である。 「「「は?」」」 今度はメンバーたちがキョトンだ。 「岡山弁で『はよぉしねぇ』って言うのは『早くしなさい』って意味なんだ……これ一番気を付けてたんだけどなぁ…出ちゃった。」 「撫子って岡山県から来てたんだね!知らなかったC!」 「あれ?ジロー知らなかった?言ったつもりだったんだけどな。」 「もっと方言聞きたいC!珍C!」 「えー…岡山弁って汚いよ?私が小学の修学旅行で他県に行った時なんて私らの学校、やーさんの子供の軍団かと思われたんだよ?」 「逆にすごくねぇか?それ…。」 「黙って宍戸…この事件私らの心結構傷ついたんだから…。でも岡山弁は好きだよ!相手が勝手にビビってくれるし。忍足とか忍足とか忍足とかさ。」 「おい、椿崎喋ってみろ。」 「だが断る。」 ―――――――――――――― 初めての方言ネタ。「はよぉしねぇ。」 イントネーションは「はよぉ(↓)し(→)ねぇ(↑)。」 ちなみにこれ実話です。修学旅行の件…。 友達も小学校の頃ですが他県から転校してきた子に言ったらその子が泣いてしまったという色々な逸話のあるこの方言。 この方言他に使ってる県とか無いのかな?少なくとも島根県では言われてないらしい。けど言う地方もあるみたいですね! 主人公と奴らの会話ネタですが、頑張ればまだ珍しい方言もあるので、読みたいと思ってくださる方が多かったら書こうと思います。 |
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