よろしいならば戦争だ |
「忍足テメェ、いい加減にしろよコラァ!」 「撫子こそ、ふざけとるんやないで!」 跡部を始めとする忍足以外のレギュラーメンバーが部室から出ようと扉を開けると、そこには制服のまま戦争をしている二人が視界に飛び込んできた。どうやら教室からここまで喧嘩をしながら移動してきたらしい。 と、ふと目を横にやると部室の壁にもたれかかってカメラを構えている滝がいた。 「あ、跡部。やっと出てきたんだねぇ。面白いことやってるよ、ほら。」 「アーン?これはどういう事態なんだ?説明しろ。」 「どうって…撫子と忍足が喧嘩してるだけだけど?」 「いや見れば分かる。なんで喧嘩してるのか理由を言え。」 「それは僕にも分からないなぁ…廊下で会ったときにはもう喧嘩してたから。」 「それをテメェは止めなかったと。」 「え?こんな面白いことを僕が止めると思ってるの?」 にこりとスマイル。跡部の口角がひくつく。 「ほら、みんな黙って見なよ。この喧嘩スゴくレベル高いから。」 訳:撮影の邪魔しないでよ。これ以上邪魔するなら…ね? 「「「…………。」」」 黙って観戦することになってしまった。なんとまぁ、シュールな図だ。 「ダラアアアァァアァ!暴飲暴食!」 撫子が忍足に向かってテニスボールを投げ、ボールが宙を舞う。 「甘いわ!」 忍足が何処からともなくラケットを取り出し撫子に向かって打ち返す。 「チィッ!」 撫子は打ち返されたボールを全てかわす。 「今度はこっちからや!」 ラケットをその辺に投げ捨て、撫子の制服の胸ぐらを掴みあげる。このまま撫子は殴られてしまうのか、 「っ女子の胸ぐら掴んでんじゃねーよタコ!」 長い足を最大限に生かし忍足の腹、鳩尾向かって蹴りを入れる。が、忍足もその攻撃を見切っていて撫子の足を捉えた。 「撫子ー、自分足で俺を攻撃してもええと思っとんのか?」 ニタリと笑う。 「しまっ!?」 こいつ足フェチだ!! 忍足はそのまま足を高く、高く上げさせようとする。 「撫子ーパンツ見えちゃうC。」 「ジロー、心配ありがとーでも大丈夫!短パン穿いてるから平気!」 撫子は掴まれた足に体重をかけ忍足の束縛から逃れる。接近戦から中距離戦へ。 忍足が両手をワキワキとさせながらジリジリと詰め寄ってくる。 「侑士キメェ…。」 撫子は生理的に足技を繰り出すことに抵抗を感じ始めた。得意の蹴りを封じられたのならば拳しか有るまい。その場を蹴り一瞬にして忍足の懐に飛び込んだ。 そのまま躊躇せず頬に向かって右ストレート。 「きゃー!椿崎先輩メガネは止めてあげてくださーい!」 「……長太郎…その答えに行きつくお前の発想が怖いぜ。」 「フフッやるねー。」 その右ストレートも忍足は寸のところでかわした。忍足も負けじと拳を突き出す。 そして撫子もかわす。攻撃防御反撃攻撃反撃攻撃防御攻撃反撃攻撃反撃防御攻撃…。二人とも息切れをしながらも戦争は続けられる。 「オラオラオラオラオオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァア!!」 「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァア!!」 「ボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラーレ・ヴィーア!!」 「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリィベデルチ!!!」 接近戦をやめ中距離戦へ、再びテニスボールが宙を舞う。数多くのテニスボールが投げて投げ返されて、ボールの軌道が定まらなくなってきた。そして悲劇が怒る。 観戦者の方向へとこぼれ玉が向かってしまった。それは跡部の顔のすぐ横を通過した。 「っ危な!?」 「……………アハ?」 そしてそれは跡部の隣で見ていた滝の近くを通ったと言う事に、必然的になってしまった。 「「「!?」」」 滝の周りの空気だけがどす黒く、重くなった。 効果音としてはドゴォン!って感じ。 「ねぇ…撫子に忍足?僕に、僕にボールが当たりそうになったんだけど?」 微笑みブリザード。 「「っ!?」」 二人は喧嘩を止め…と言うよりその場に固まった。 「二人とも、こっちにおいで?」 「「…はい。」」 とぼとぼと滝の元に歩いていき、自主的に正座。 「なんで、喧嘩をしていたのか…教えてくれない、かな?」 「せや!滝聞いてや!撫子がおにゃの子の一番魅力的なんはくびれだとかぬかすんや!」 「ちょ、忍足違うから!厳密に言うなら下乳の辺りからの流れるような曲線かーらーの腸骨辺りまでのライン!くびれだけじゃないし!忍足だって足って言ってんじゃん!」 「違いますー。足つっても膝の上下15cmの間と足首からつま先ですぅ。」 「ウワ、マニアック過ぎ!キモキモキモキモ!自分キモいわぁ。」 「撫子こそ女子のクセにおにゃの子の魅力吟味しとるんやない!」 「いいじゃん別に!やんのか、ぁあ!?私を女子だからって見くびんじゃねーぞ!」 「望むところや!」 放っておくともう1ラウンド始まりそうだ。 「ねぇ…そんな下らない理由で喧嘩、始めたんだ?」 「「く、下らない!?」」 「じゃ、あ…滝は何が魅力だと思うのさ!」 「え?そんなのピーがバキューンしてるだけでいいじゃん。」 「「「…………。」」」 「…なんか身の危険を感じるよ。」 撫子はとっさに身構えた。 「まぁ否定はさせないよ?じゃ撫子に忍足、色々と食いしばってねー?」 「「え?」」 「だって僕怪我しそうになったから、これ正当防衛だよね?」 「え、ちょ…それちが…。」 「あぁ、抵抗してもいいよ?ただちょっと痛くなるけど、どうする?」 この後のことは誰も覚えていない。覚えていても思い出したくない。ただ一番印象に残っているのは滝が今までにないぐらいの良い笑顔だったという事だ。 ―――――――――――――――― 50000hit企画第1弾 香織様リクエスト『デュラララの24時間戦争コンビみたいなやりとりを忍足と主でやっているのを見た氷帝メンバー(滝様除く)がうろたえる』でした。 流石にナイフとかは投げれませんでした。 始めはラケットやらボトルやらも投げていたのですが…止めましたー。当たっても、避けても地獄しか待っていなさそうだったので^^; |
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