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サンドリヨン[Cendrillon] 02


「とってもセーフ!」

「ギリギリセーフ。お疲れシンデレラ。出してシシド。」

待機していた馬車に駆け込んで間に合ったと自己主張。それを返す滝。それから馬車を出す様に宍戸に指示を出してこの城から離れる。

「よ、よかった…ただいまタキ。」

「今回も滞りなく任務は遂行できたようだね。」

「うん、今回の王子は可愛かったよ。殺っちゃうのは勿体無いくらい。」

撫子は着ていたドレスを脱ぐ。動きにくいと言うのもあったのだが、少しでも気を紛らわせたったから。すぐにいつも着ている惨めな古着へと体を通す。

「へー、でもただのターゲットにそんな感情を抱くのは感心しないよ。」

「大丈夫だよ。これは私の上辺だけの感情だから。私の女子力もあがってっちゃってる?」

「そう言う割には手、震えてるね。」

その言葉に着替えていた撫子の動作は止まる。止まって顕著に表れるのは撫子は小刻みに震えてしまっている姿。

「…まだ興奮が冷めてないってことにしてよ。人の命一つ消してるんだから。」

「もう十何年消しといて、何言っ……そういう事にしておいてあげるよ。」

着替え終わって、馬車が特定の場所で止まるまでその震えが止まることは無かった。そして馬車を降りる撫子。

「次の仕事はいつ?」

「さぁ?まだ決まってないよ。」

「そ、じゃぁまたあったら言いに来て?」

「うん、そうする。多分また舞踏会でやってもらうことになるから。」

「またかー。舞踏会での暗殺って嫌いなんだよなー。別に消しにくいとかそういうのじゃないんだけど。何回、舞踏会を廻ればいいのやら。」

それだけ、舞踏会で恨みを買う人間が集まるってことだよ。それまで現実にお帰り?サンドリヨン。」

「……現実は好きだよ。夢は嫌い、大嫌いだ。覚めた時それが嘘になるから大っ嫌いだ。」

撫子は家の前で馬車を見送った。見送ってから自分の家へ帰る。

「ただいま。」

さっきとは全く違う雰囲気の家。暖炉の暖かさが身に染みる。そして一番に迎えてくれたのは忍足。

「ん?今帰ったんか。お帰り。」

「母さん、ただいま。まだ起きてたんだ。」

「シンデレラーおかえりだC!ね、俺お腹減った!なんか無い!?」

「姉さん、んー…今から簡単なモノ作るからそれまで待ってて?」

「リョーカイ!ガクトとそれまで待ってる!」

撫子はこの生活が楽しいのだ。別に虐められているとかは無い。だた、母と姉達は家事がべらぼうに出来ないだけで、
撫子はその人達の生活を一手に引き受けているだけ。三人の笑顔が見えるなら自分が修羅の道に入っていても気にはしない。
こうでもしないと生活を支えられないという事もある。

「なぁ、シンデレラ?」

「何?」

夜食の準備をしていると忍足に話しかけられた。

「こんな夜遅くまでの仕事って何やっとんの?」

「んー…お城に行ってお掃除してるんだよ?私らしい仕事でしょ?」

「シンデレラはホンマ掃除が好きやなぁ。この家でもよく掃除しとるとこ見るし。」

「それは母さん達が容赦なく汚すから掃除しないとこの家腐海に呑み込まれちゃうよ。」

「それは勘弁してほしいな。…やけど……昼はこの家の掃除して、夜は仕事に出かけさせてしもうて…なんや悪いなぁ。せめて食費を抑えれたらなぁ。」

「母さん待って!仕事は私が好きで引き受けてるんだし、ガクト姉さんやジロー姉さんにはひもじい思いをさせたくないの。勿論、母さんにも!私なりに恩返しがしたいの!だからそんなこと考えないで…お願い。私は平気だから。」

「…シンデレラがそう言うんなら、ええけど……今日はそれを作ったら早く寝ねぇよ?」

「うん…分かった。」

忍足は撫子に心配の声をかけてから自分の寝室に戻る。撫子は再び調理を開始。出来上がったモノはジローと岳人の腹の中に納まる。
美味しそうに食べる二人の笑顔こそ撫子のエネルギーである。

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