035 |
「それって…なぁ……。」 「…そっスよね。」 「それは…ですね。」 「それはなぁ…。」 「…それって…。」 それぞれが口々に仁王に対して共感の念を持つ。 仁王の顔は真っ赤だ。 仁王は顔を見すまいと後ろを向く。 「?なんなの?みんなも仁王に味方すんの?」 「そう言うわけやないで、ただ…なぁ……これ男子にとっては黒歴史になるんや…。」 「はぁ?黒歴史はこっちだっつーの。」 「あるやん、好きな子だからこそイジメてまう…みたいな。」 「は?それって二次創作という文化の中で生まれた副産物じゃないの?」 「…撫子は恋したこと無いんか?」 「あるって!」 「二次元やないで三次元でや。」 「……無い。」 「「「………………………。」」」 沈黙の部室。 頭を抱える者が数名。 「まぁ、撫子が三次元に興味がないからマネージャーをしてもらっとんやけどな…。」 「てか、さっきの好きな子だからこそイジメるってやつ三次元にもあるの?」 「あるぞ『反動形成』。れっきとした適応機制のの一つだ。知られたくない感情や容認されにくい欲求を隠すために無意識的に反対の行動をすること。」 「…ご丁寧にどうも……。」 柳と言う男子生徒はとても博識だ。 さっきから色々と的を射ったことを言ってくれている。 「な?」 「え?ちょ、ハァ?好きな子に意地悪したことのある人挙手。」 スッと手が上がる。 八割程度。 「……マジ?ってことは…。」 「仁王って椿崎さんのこと好きだったんだね。」 仁王がこれでもかというほど赤くなる。 撫子がボンッと言う効果音が似合うように顔が赤くなる。 「な、ななななっなななな何言んってんの!?幸村君!好きだったらイジメるわけ無いじゃん!女子はそんな事させたら嫌いになるよ!!」 「だから黒歴史や言ーたろ。」 「な、でも、ないないないそんな訳ないし!」 「しかしだな。仁王が実際した嫌がらせというのは可愛い程度の物だろ?」 「そそそそそだよ!」 「ここからは推測だが、…俺の推測には定評があるからな。少し聞いてくれ。 まず、仁王は椿崎撫子が好きだった。これは覆しの無い事実だ。可愛い嫌がらせも適応機制で説明がつく。 周りがイジメ始めて止めに入らなかったのは自分が惚れていることを気付かれたくなかったため。テニスクラブに入ったのも君をもっと知るため。そこの年上の人に取り入っているように見えたのは仁王がその人たちに君がどのような人かを聞くため。事件発生中仁王が下をずっと向いていたのは二人きりの時間が長く照れていたため。仁王が今もテニスをしているのは君がテニス部に入っていたらまた巡り会うかもしれないという希望から。 仁王の計算違いは、周りが自分にのってくるとは思わなかったこと、年上の人が君に対して嫉妬心を抱いてしまったこと、君がテニス部に入っていなかったこと。それ位だろう。 どうだ?仁王。」 「プリッ……しゃ、流石じゃのぉ、うちの参びょ、参謀は。」 ポーカーフェイスを保とうとしたが無理だった。 かみまくっている。 |
<< TOP >> |