青春Destroy | ナノ


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「正面衝突ぁあああ!鳳めんご!」

「え!?あ、は!?嘘!」

撫子は鳳に向かって全力疾走。鳳は撫子の行動に驚いて身を固くした。そして助走をつけた撫子は鳳の肩を捉え、鳳の頭上をさながら平均台の上で倒立するようなポーズを決め、足で綺麗な半円を描きながらピシッと両足で着地した。

「そうはさせないよ。」

「な!?滝ッ!?」

鳳の頭上から着地した撫子はゲートをさっさとくぐってしまおうとすぐに地面を蹴って疾走したかったが、そうは行かなくなった。滝が撫子の行動を読み、それから撫子の行動を阻害しようと、腕を掴んだのだ。振り払ってしまおうと思ったが滝が力強く掴んでいるため、離れない。

「ハァ…。」

撫子は観念したように振り払う行動を止めた。逃げることを観念した。

「だって…私に湿っぽいの似合わないし……。」

「似合う似合わないの問題じゃないよ。君はそんなにも非常識だったのかな?」

「……。」

「…黙ってたら分からないよ。」

「…何さ、今こそ読心術を使うべきでしょう?使えば何もかも分かるでしょう?」

「今だからこそ使わないんだよ。なんでもかんでも読んでたら、君はそれに甘えるでしょう?」

「……滝、はいつから私が渡米する事知ってたの?」

「クリスマスパーティーの日、君がお酒に酔った勢いで言ったんだよ。」

「私はなんて失態を…。」

「滝、聞き捨てならんで!自分そんな昔から知っとったら俺らに言うとか、撫子を止めるとか出来とったんとちゃうん!?」

滝の発言に驚くメンバー。そして代表して忍足が言った。何故、言わなかった、と。

「忍足、君は撫子の将来を壊す気?アメリカに留学しないか、なんて誘い頻繁にあるわけじゃないんだよ。」

「っ…せやけど……撫子…俺らは、…。」

相談すら出来ないほど頼りのない奴らだったのか、と。

「ごめん…。」

「椿崎、俺達は謝罪を聞きに来たんじゃねーよ。」

「…ごめ、ん。だって…だって、だって!私だって悩んだ!悩んだんだよ…!」

撫子は意を決して言った、叫んだ。

「……。」

「だってさぁ…こっちに来てさぁ、仲の良い人が想像以上に出来ちゃってさぁ…私だって…行きたくなかったけど、誘われたら行くしかないじゃんか…ッ!旅費も、学費も、向こうの家賃も、何もかも保証されてさぁ、後は私の同意だけで良い状況でさぁ…どうやって断れば良かったんだよ!友達と別れたくないから行きたくありません?そんなガキみたいな言い訳言えるもんか!外国語喋れません?治安が悪いので嫌ですぅ?んなもん論破されるわ!お前等とさぁ、最後会ったらさぁ…私の決断揺らぐんだもん…私、私……意志弱いんだよ…ッ。」

声を揺らしながら撫子は言った。それから暫しの沈黙、なんと声をかければいいのだろう。悩んだ末、沈黙を破ったのはジロー。

「……行かないで、って…俺、言いに来たけど、撫子…行っておいで。」

「ジロー…。」

「居なくなるのは寂しいよ。悲C…けど、撫子は一人になっちゃうんだもんね。他のみんなが周りにいるのに、誰もかけてほしくないだなんてワガママだC…。」

「そう…だな。クソクソ!俺も高校生になるんだから大人にならねぇとな。まだまだ子供だったぜ!」

「でも椿崎、激ダサだぜ!行ってきますの一言でも言って行けよ。」

「そうですね。俺達は椿崎先輩の意思を尊重して背中をおしますよ。」

「交換転校生の椿崎さんとしては正しい判断をしたと思います。でも、急なんですよ。何度、俺達を混乱させれば気が済むんですか。」

「…日吉は何時まで経っても辛辣だなぁ……。」

撫子の行動は否定されなかった。暖かい言葉を向けられた。ひとりは通常運転な態度ではあったが。
しかし、こう思われているなら撫子の心は決断した。後腐れ無く、渡米が出来る。

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