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「はぁ?自分ら、間に合わんやろ。どうこうしとってもう12時30分やん。」 女子がその二人の行動をあざ笑うかのように言うと、跡部は樺地を呼び、樺地が何処からともなく現れた。 「…おい樺地。」 「ウス…。」 現れた樺地は女子を米俵のように担いだ。それから跡部の隣に位置した。 「うわ!?な、なんなんや!?」 女子は暴れるが樺地の肩から降りることは出来なかった。 「黙れメス猫。俺様を誰だと思ってやがる。」 「ね?跡部、僕が言った通り屋上にヘリを待機させてて良かったでしょう。」 「……。」 「た、滝君…自分、撫子様がアメリカ行くん知っとったん?」 「うん。クリスマスの時から。」 「はっ!?なんで!?なんで、なんで!?撫子様ぁあッ!?」 「ちょっと五月蝿い。みんな、撫子に会いたいなら着いて来なよ。」 滝の一言でテニス部メンバーは屋上を目指すことにした。 パーティー会場内は一瞬ざわついたが、直ぐに対象は別のものに移動した。照明が消え壁に映像が流れ始めたのだ。所謂懐かしい写真などのスライドショーである。懐かしそうにみんなは鑑賞し始めた。 テニス部は順調に屋上につき、それからヘリコプターに乗り込んだ。 「おい、間に合うか?」 乗り込んで発進。跡部はパイロットに到着時間を聞いた。 「はい、坊ちゃま。椿崎様の出国予定の30分前には空港に到着いたします。」 「そうか。」 「わー、ヘリコプター最強やー…。」 「良かったね。さぁ、ここからは僕達の質問に答えてもらうよ?黙秘権なんて…あると思わないでね。」 「…うちも女や、腹括ったるわ。」 半分脅しめいた台詞だったが女子は臆することなく率直に答えた。滝はその様子をクスリと笑った。女子の事は気に入った様子。 そしてどうこうしている間に空港に到着。一行はヘリから降り、撫子を探す。探すと言っても広い飛行場。すぐに見つかるわけ…。 「―――うん、分かった。そこにいるんだね。今から行くから。みんな、撫子の居場所分かったから行くよ。ついて来て。」 「撫子様逃げて、超逃げて、むしろうちが逃げたいわ。ミッションインポッシブルやったんや!」 「逃がさねぇぜ、メス猫。…樺地。」 「ウス。」 「米俵再び!?」 逃げ出してしまおうとする女子を再び捕獲。それからまた移動。注目を浴びまくる。フォーマルな格好をしたイケメン軍団に、担がれている女子。これ以上シュールな絵も無いだろう。 「あれー?腹括ったんじゃなかったのー?」 「…あれは言葉の文やねん……。」 そして一行は滝の案内で下手にうろうろするわけでもなく、真っ直ぐ直線的に撫子のもとへ。撫子の特徴である長身な女子を発見した。近くには鳳と日吉の姿も確認できたのだ。この二人が撫子を確保していたのだろう。今この瞬間だって確保しているのだが、近寄りたくない。 「カバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディ!!」 「椿崎先輩、怖いです、キモイです、気持ち悪いですぅ!」 「だったら退けろや!後はそこのゲートを潜れば私は勝てるんだから!荷物だって預けたんだよ!?あんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱん!」 「あんぱんあんぱんうるさいですよ。」 「だったら!レグバルクリヤンザンダスアティボン レガトルアルバンザンドライモール レグバルクリヤンザンダスアティボン レガトルアルバンザンドライモール レグバルクリヤンザンダスアティボン レガトルアルバンザンドライモール!」 「「「……。」」」 撫子と鳳がさながらバスケのディフェンスをやっているかのようだ。 「あ、跡部さん達やっと来たんですか。遅いですよ。」 「日吉に鳳、ご苦労様。いやね?僕も撫子に執行猶予をあげたかったから。お別れの挨拶をね、しに来たらこんなことしなかったよ。」 「ッた、滝様結構怒ってらっしゃる?」 「どうだろうね?フフっ。」 微笑と言うか嘲笑と言うか、何とも言い表せれない笑みが滝の顔面には張り付いていた。 そんな笑みで滝は一歩ずつ撫子に接近していった。前の犬に後ろの魔王状態の撫子は何処に逃げようかと思考する。勿論、道は一つ。 |
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