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滝の話す内容は跡部主催のクリスマスパーティーの時、撫子が誤って酒を飲んでしまった時の話。撫子はそう言えばそんな事もあったな、と懐かしく思い出していた。しかし、撫子はほのぼのと思い出していたのだが、ほのぼのな出来事ではないだろうと言う反応を示した者が一人。 「滝ぃい!?撫子に何をやったんや!」 そう、忍足である。 「「「キャァアアア!」」」 いや、回りの女子も反応していた。幻滅した、と言う反応ではなかった。何だろう…ピンクな反応だった。どうやら滝の文章でただならぬ妄想をしたらしい。 「撫子!?滝となんちゅうことしたんや!?大人の階段上ったんか!?」 「登ってねぇs――!?」 撫子は何言ってんだコイツ。といった表情を浮かべながら否定文を述べようとした。しかし、それは滝が撫子の口を手で押さえてしまい出来なかった。 「撫子、みんなには内緒って言ったでしょ?何?またお仕置きされたいの?」 「!?」 止めてくれ。私が何をしたと言うのだ。お仕置きってなんですか、年中無休の慢性的に行っている以上の何かですか止めて下さいお願いします。 撫子は心の中でそう叫びながら首を横に振った。それよりも先程から口を押さえられているのだが、同時に鼻も押さえられ息が出来ない。ホールドしている滝の腕をペシペシと叩いてギブアップの意志表明。 「ん?あぁ、塞いじゃってたね。」 滝は撫子の決死の合図に気がついて撫子を一応解放してやった。 「ッはぁぁぁ…死ぬかと思った。」 「え?花畑の向こう側にある川を渡りたいって?」 「そんな事言ってねぇよ!」 「あれ?言ってなかったっけ?…まぁ、いいや。ところで撫子は今日も僕のあげた懐中時計持ってるの?」 「ん?当たり前だぜ!つーか最近滝ってこの懐中時計の事聞いてくるね。何で?…ハッ!まさか返せだなんて!?」 「そんなみすぼらしいこと僕が言うわけ無いでしょ。名誉毀損だよ。」 「失言サーセンした!」 「あー、僕傷ついちゃったなぁ。と言うわけで、撫子にも同じ目にあってもらうよ。…会長さん。」 「はい!滝様!私共スタンバイOKですわ!」 「え、子猫ちゃん!?」 滝が呼び寄せたのはファンクラブ会長を始めとする数名の女子。 「うん、上々だね。じゃ、もう作っちゃって!」 「はい!ではお姉様、失礼いたします!」 「えっ、ちょッ待!」 撫子は今度は両腕をホールドされた。しかしながら、両手に花状態でもあるため手酷く拘束から逃れようともしなかった。そして連れて行かれた先は演劇部の衣装準備室。 「正直、予想はしてたさ。」 連れ込まれてちょっとして、全ての行動が一段落した時に撫子はボソッと呟いた。その呟きは女子達の歓声で消えることになったのだが。 「お姉様!いえ、蒼の貴公子様ぁあ!」 「「「キャァアアア!」」」」 そう、すべての元凶であるKAITOのウィッグを被り、今回は氷帝男子の制服を着ている撫子が女子達の目の前に存在していたのである。 「…この姿では久し振りだな。子猫ちゃん達。」 こうなったらやってやろうじゃん、と言った気持ちで撫子は良い声で口説く。 「っ愛してますわ!」 女子が一人感極まって告白をした。撫子はそれに対して落ち着いた風で答えた。 「あぁ、俺も愛してるぜ?だが…俺は愛するより愛したい。博愛主義者なんだぜ?お前は黙って愛されておけ。俺に惚れると火傷するぜ?僕はキメ顔でそう言った。」 女子の顔をクイッと捉え、撫子はキメ顔をした。どこぞのホストのようである。 |
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