青春Destroy | ナノ


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「卒業生、在校生、職員起立。保護者の方々もご起立下さい。だだ今より氷帝学園中等部の卒業式を施行いたします。」

開式の辞。さて、長い式が始まった。

「卒業証書授与。卒業証書授与されるもの、代表、三年A組跡部景吾。」

「はい。」

卒業証書授与。
校長式辞。
PTA会長式辞。
来賓紹介。
祝電披露。
在校生送別の辞。

沢山のプログラムを行って、


「卒業生答辞、卒業生代表、三年H組、椿崎撫子。」

「はい。」

撫子は登壇し、マイクの前に立ち、紙を広げた。一度文面に視線を落とし、それから一呼吸して言葉を述べ始めた。

「本日は私達のためにこのように盛大な卒業式を開いていただきましてありがとうございます。
また先程は校長先生をはじめ来賓の皆さん、在校生の皆さんからあたたかいお言葉を頂き、胸が熱くなる思いがしております。本当にありがとうございました。こうして壇上に立っていると、講堂の天井のシミや、窓ガラスの一枚一枚も懐かしく、いとおしく感じられ、私達がこの学校で過ごした色んな出来事が次々に頭の中によみがえってきます。
自分自身はこの学校で過ごしてきた期間はこの一年間だけでした。交換学生と言うプロジェクトに抜擢され、右も左もわからないまま上京してきました。この頃の私はこの学校に馴染むことが出来ていませんでした。当たり前です。中学三年と言う中学時代で一番ストレスのかかってしまう時期に私が転入してきたのですから。辛い事が沢山ありました。悲しいことが沢山ありました。挫けてしまいそうでした。私のせいで画期的なプロジェクトも失敗に終わってしまうのではないかと不安続きの毎日でした。しかしその分、楽しいことがありました。嬉しいことがありました。そしてそこで友達との絆を私は得ることが出来ました。相談せずに一人で抱え込んで押しつぶされそうな私に手を差し伸べてくれました。それを意地になって払いのけた私を怒ってくれました。こんな不甲斐無い私を支えてくれました。本当にありがとう。そんな大切な友達を私は得ることが出来、そこからは楽しい毎日でした。私をマネージャーにと誘ってくれたテニス部。私を姉の様に慕ってくれた同級生に後輩。ここに来なければ一生得る事の無い大切なものを私は沢山貰いました。
そして楽しい事ばかりで終わらない三年生。進路を決める時期になって急に焦りはじめた私達を、先生方は親身になって指導してくださいました。厳しい時は火のように恐ろしく、優しい時はこの上なく優しい、こんな先生に私たちは初めて出会いました。「最後は自分で決めろ」と、おっしゃった時の先生の声は今でも耳に残っています。そして今日、私たちはこの学校を卒業します。本音を明かしますと……、この先、私たちの前にッ広がっている世界を見て、不安に身が…竦み、震えるような思いがする一方で、期待に胸が膨らみ、わくわくするような思いも致します。ひとりひとりの…、不安は、友と手を取り合うことで勇気と…力に変えて、三年前と同じように、胸を張ってこの門から旅、立つことこそが………、私達卒業生のッ使命だと思えるようになりました……。困難にも、勇気を持って立ち向かうための剣と楯を…この、三年間で得たような気がしています。
……ふッ…最後になりましたが…、校長先生をはじめ諸先生方、そして…お父さん、お母さん、本当にお世話になりました。私達は…ッ必ず、皆さんから受け取った『心』を忘れずに……それぞれの進路へと旅立っていきます。どうかあたたかく…見守ってください。そして時には変わらぬ ご指導をッ…お願い致します…。
卒業生を代表し、ここでもう一度心から感謝の言葉を申し上げ、答辞とさせて頂きます。
本当にありがとうございました。 」

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