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「えっとー…日吉はあたった。樺地は跡部だからくれないだろう。滝様は無理。チョコはあげるけどくれる人から…そうだジローのとこに行こう。」 と言うわけでジローの教室、すなわちC組に足を運んだ。 「ジロー!プリチィですかぁあ!」 「うん!俺、いっつもプリチィ!」 「そんなプリチィなジローにバレンタインキッス!」 「A?チューするの?んちゅー。」 「ハッ!?ジ、ジ、ジローが目を閉じて唇をこちらに向けている…だと!?これは夢か。夢なのか!?よし夢だ!頂きまーす!」 「止めろ痴女。」 ジローが目を瞑り、んちゅーとしている様子を撫子はかなりテンション高めに対応していた時、とても冷静な声と鋭い手刀が撫子の後頭部を襲った。 「イッザーク!?」 「激ダサどころじゃねー姿を晒してんじゃねーよ椿崎。」 どうやら撫子に攻撃を食らわした奴は宍戸だった様だ。そう言えば宍戸はジローと同じクラスだったな。 「宍戸…テメェ、容赦なく叩いてきたな…。これでもアテクシ女だぞ。」 「それは初耳だったな。」 「し、宍戸さん。それは流石に失礼だと…。」 そうしたら宍戸の後ろに位置していた鳳が宍戸を注意した。 「鳳ぃい!君は宍戸の味方をしてあげてくれぇえ!」 そっちの方が盲目的loveっぽくて萌える。 「え!?どっちですか!?」 「さて、君達を適度にいじったので余は満足じゃ。ホレ、受け取れ。チョコじゃぞい。」 撫子はジローと鳳にチョコを手渡した。 「ありがとうございます!」 「わー!これ撫子の手作り?」 「オフコース!私の愛がねっとり入ってるぞよ!」 「じゃあ、胃薬用意して食べるC!」 「ジロー、それはナチュラルに酷い。」 ジローのおふざけで若干心が抉れた撫子は教室を後にしようとした。が、まだ一つやり残したことがあった。 「し…宍、戸……。」 「あ?んだよ。」 さっきチョコをみんなと一緒に渡さなかったからか少し不機嫌である。しかし、これでいいのだ。 「あの、ね?どうしても…その……。」 とても緊張した空気を醸し出す撫子。まるで恋している女である。 「な、なんだよ。」 「わたッ私、こんな成りでさ女っぽくないし、そんな魅力無いけどさ。けどやっぱりそう言う思いを抱いちゃうわけでさ…。丁度いい機会だから…渡したい物があるんだ。本当は宍戸だけ別に渡したかったんだけど…私、臆病だからさ…。」 モジモジとテレテレと。 「渡したい物って…なんだよ?」 「…ん。これ……。」 撫子が袋から出して宍戸に差し出したのは他の人に渡したようなちっちゃい物ではなく。箱、さらにはラッピングをきちっとしたものであり、見るからに特別感がある。 「!?」 「受け取って…くれる?」 コテンと小首を傾げて、顎をほんの少しだけひいて、なるべく…なーるーべーく、可愛い仕草をした。 「お、おぉ…サンキューな……。」 「Aー!宍戸ズルいCー!」 「バッ!ずるくねぇよ!」 「ブーブー!中身なんなんだよー。開けろよー。」 「…椿崎、開けても良いか?」 「え!?あ…うん。いいよ!」 撫子に一言聞いた宍戸はそれから作業に入た。包装を宍戸にしては珍しく丁寧に広げていった。そしてそこから現れたものは…。 |
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