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「…ぅ、ん?っ…ハー……。」 パチ、と目を開いた撫子は何やらふかふかなベッドの上に横たわっていたらしい。とりあえず起き上がってみようとしたが、無理だった。力が入らない。さらには頭がクラクラする。 「…起きたんですか椿崎さん。」 「ん?…日吉、か……。」 声がかけられて声が聞こえてきた方を向いてみるとそこには日吉が本を読んでいた。 「俺じゃ不服ですか?」 「…いんや、満足。ツンデレ萌えー…。つーか君以外だったら色々と面倒くさい。」 跡部は論外。忍足は想像できない。宍戸は鳳とつるんでいて欲しいし、岳人とジローは騒がしい。樺地は跡部に遣えるし、滝は恐れ多い。 「確かにそうですね。しかし…自分の体調管理も出来ないなんて馬鹿じゃないですか?」 「いやー…年末の祭典で何かもらってきてさー。それに折角こんな着物を着付けてもらったんだもん。下手に無碍に出来ないじゃんかよ。」 「だからと言って熱でぶっ倒れるなんて聞いて呆れますがね。」 「デスヨネー…ふぅ……。」 「…お腹減りましたか?」 「いや…減ってない。」 「減ってますよね?」 「…減ッテマス。」 確かに減ってはいるが、お腹に物を入れたいという欲求が極端に少ない。しかしながらその気持ちは日吉には筒抜けらしくしつこく聞かれた。 「当たり前です。もう午後8時ですから。今軽いものを持ってきます。少し待っていて下さい。」 日吉は軽い物を持ってくると言って部屋から出ていった。 「え、ちょ8時!?」 そして既に夜と言っても過言ではない時間に撫子は驚きの声を発したが誰にも拾われることはなかった。 「…新年早々私は何やってんだろ…日吉が居てくれたとか、ツンデレ…ごちそう…さ、まで……。」 「跡部さん。椿崎さん起きましたよ。」 日吉は部屋を出ていって跡部他が居る部屋へ。 「アーン?…そうか。」 「撫子、どんな?苦しそうやった?」 撫子を家から引きずり出してしまったのは忍足であったため、少々の責任を感じてしまっているらしい。 「いえ、対して苦しそうとかは無かったです。起きあがることは出来なかったようですけど。」 「…さよか。」 苦しそうではなかったという言葉を受け、忍足は一安心といった風になった。 「それで跡部さん、軽い物を椿崎さんに食べさせたいのですが…何かありますか?」 「それならコックに作らせよう。」 日吉の提案に跡部はのって作らせると言い命を下した。 「ブー…撫子と福笑いとかカルタとか遊びたかったC…。」 「クソクソ!何で熱だしてんだよ!」 「こら二人とも、そんな事言わないの。撫子も好きで熱だしてるんじゃないからさ。…だけど、撫子も風邪引くんだ。」 「滝…それ遠回しに撫子の事、馬鹿や言うとらんか?」 「やだなぁ、そんなわけないでしょ。」 どうでもいい会話を十数分。そうしたらお粥が運ばれてきた。それを日吉は受け取り撫子の元へと戻っていった。 「日吉ー!俺もついて行くC!」 「…良いですけど、椿崎さんの体調を悪化させるようなことしないで下さいね。」 「しないしないしないC!」 「ジロー、お前はここに居ろ。日吉だけ行け。」 跡部がジローを制して日吉だけ行くように指示した。 「Aー!なんで!?」 「お前は存在するだけで椿崎のテンションをあげるだろうが。」 「跡部…するどいな……。」 「何年アイツと居ると思ってんだ。」 「跡部、残念だが椿崎が氷帝に来たのは三年になってからだぜ。」 「……。」 「あー、そういやそうやったな。毎日が濃いかったなぁ。」 付き合いが数年だと錯覚させる撫子のキャラの強さ。脱帽の域である。 |
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