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「聞いてない聞いてない聞いてない聞いてない聞いてない聞いてない聞いてないいぃぃいぃ!!」 叫びながら走っている。 撫子はとっさに立海メンバーが使っている部室に飛び込んだ。 何故ならこの部室は撫子がいつもマネージャー室として使っていたから。何時もの癖で、飛び込んだ。 幸いメンバーは着替え終わっていたようで…まぁ、よかったのではないか?痴女って言うレッテルが張られなくて済んで。 「なななんだよ!?」 「いったい何事ですか!?」 「いきなり入ってくるとは何だ!たるんどるのではないか!?」 いきなり入ってくるな!とは一般論だが今の撫子の脳内では一般論なんて通用しない。 しかたがないだろう、会いたくも無い人に会ってしまったのだから、 まだ着替え中に突入しなかっただけましだろう。 「すすすすすみません!いつも私がここ使っていたもので!って言うか聞きたいんだけど!まさか仁王雅治って輩、立海レギュラーに所属しているんですか!?」 何時もなら理不尽なことで怒られたら二、三個の嫌みを添えて反撃するが今回は素直に謝ってしまった撫子一生の不覚。 「うん、居るよ。ねぇ柳生?」 「はい、僭越ながら私と仁王君はダブルスを組んでます。」 「俺は同じクラスだぜぃ!」 「……………………ジーザス…。」 項垂れるしかできない。 この世に神も仏も居ないのか。 「いったいどうしたんだ?」 ハゲが問う。 「…ちょっと過去に色々ありまして……。」 「小学校一緒だったんだ?」 「…少しだけ。仁王は転校してきて直ぐどっか行ったから…。」 「仁王の被害者か?そりゃあ…辛いことがあったようだな。同情するぜ…。」 赤髪がぽんっと肩をたたく。 「……そりぁ…もう。」 テニスに拒否反応しか示さなかった時期があったよ。二年位。 「慰めてやろうか?ジャッカルが。」 「俺かよ!」 「赤髪君、ジャッカル?君…ありがとう。」 「あ、俺丸井ブン太!シクヨロ。」 「ジャッカル桑原だ。」 「…よろしく……。」 撫子とブン太、ジャッカルが対談をしている間に幸村は柳に撫子と仁王との間に何があったのかを聞いていた。 「ねぇ柳。何か知ってる?」 「すまない、仁王の小学校時代の交友関係は把握できていない。仁王は転校しすぎだ。」 「そう。」 柳でも把握できていないとは、どれだけ仁王は転校していたのだろう。 「幸村君!」 柳と言う少年と幸村が話している間に撫子は幸村にすがりつく。 話しを遮ってしまっているかもしれないがそんなのはお構いなし、それだけ切羽つまっているのである。 「何だい?」 「どうかこの練習試合中、仁王を私に近付けないようにお願いします!協力して下さい!」 「理由を聞いて良いかな?」 「言います!言いますからぁ!」 藁にもすがる思いだ。 「じゃいいよ。」 「ありがとうございます!理由は昼休みに言いますから。もう時間押してしまってるんで。私の後についてコートについて来て――。」 下さい、と言いかけたが部室のドアを叩く音が聞こえる。 |
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