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撫子は自身の本が一角に積まれているところを見て満足。そして積んでくれてありがとうとお礼を言おうと柳をの方を向いたのだが、それより前に仁王の顔が視界に入ってきた。 「仁王…中身見たね?」 その仁王はポーカーフェイスを気取っていたが目だけがキョロキョロとしていた。 「…み、見とらんよ?」 「嘘をつくな嘘を。お前、青ざめてるじゃねーか。」 「嘘じゃ!?」 「嘘だよーん。メイクがっつりしてんだから顔色なんて見えるわけねーじゃん。」 「な!?かま掛けたんか!」 「仁王、コート上の詐欺師としてその失態は恥ずかしいな。」 「ここはコート上違うけ!」 「まぁ…見た見てないで、結局は見たらしいが…後悔するのは仁王だから良いよ。どっち見たの?新刊?再録?」 撫子が出した物は書き下し新刊と、サイトにうpしていた例の仁王(仮)が主人公である物語であり、仲直りしたことでジャンルを変え、そして完結させたのである。それを折角だから形にしたのだ。 「分厚い方じゃ…。」 「あぁ…主人公設定がお前の…。完結したから本として出したかったんだよねー。あ、マスター取って行った?」 「あぁ、新刊と再録両方一冊ずつ頂いた。」 「そっか、ならおk。」 忍足は戻っていないようだが、まぁ…戻って来れませんよね。 「さて、そろそろだな撫子さん。」 「うん、私はこれから少々売り子としても参加してあげようではないか。」 「それはありがたい。正直仁王と柳生だけでは不安だったところだ。」 そしてゲートが開いたらしい。アナウンスがかかった。 一般参加者の冬コミの開始である。押さず翔らず、夢を諦めない。それを守って入場である。目の前をそんな滑稽な集団が通り過ぎて、正直面白い。 柳のサークルにも人が集まってきた。それを裁いていく。撫子扮する鬼灯に惚れたり、仁王扮するお香に別の意味で見惚れたり、忙しそうである。 そして、 「僕のヴィーナス!」 撫子をヴィーナスと抜かす輩が現れた。まぁ、一人しか居ないんですけどね。 「「「ブハッ!?」」」 「み、みみみ観月君!?と、赤澤君…?な、君達は…コミケに参加するほどレベルは高くないはず!?と言うか来るんなら昨日のメールで言っておきなよ!」 「メル友になったんか…。」 「おぉ、仲のいい友達だ。」 「うんまぁ…しかし、な。」 「どうしたんだ?」 「うん…直接言われるのはなれない物はありますよね。よし、マスター!私はコスプレゾーンに!」 「撫子さん、逃げる気か?」 「どこに行くというのです!折角この迷宮を解き明かし僕と巡り会うことが出来たというのに!」 「…観月君よ……苦手な事は、苦手なのだよ…。マスター、何時か仮は返しますから!」 撫子は脱兎。今までのイベントで鍛えた競歩の速さ。観月からどこぞのスピードスターの様な早さで逃げていく。 「あ!?撫子さーん!」 流石の観月も追いつけない様子。そして青ざめる赤澤。八つ当たりはきっと赤澤に行くから…赤澤は犠牲になったのだ。 |
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