青春Destroy | ナノ


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さて、次向かうべきサークルは、

「蔵さーん!」

HN:ホワイトストーン。『妄想したもん勝ちや』のサークルである。

「おぉ、撫子さん。おはようさ――「おはようございます撫子さん!」

白石が全部言葉を言う前に財前が遮った。

「おぉぉおおおおお!?光ちゃん光臨満を持して!?」

そう、財前は再び黒の艶やかなウィッグを被っており「光ちゃん」の再来である。

「せやで、売り子やってもらうねん。やっぱ女子が居った方が買いやすいやろ?」

「やっぱり?私もそう思って仁王を女性コスさせて待機させてきた。」

「流石っすわ!」

「え!?撫子さんサークル参加しとったっけ!?」

「私は直接してないよー。マスターのサークルに委託なうだね。ま、新刊って言ってもサイトにうpしてるやつの再録と書き下ろしをちょっとした感じかな?欲しいならあげるよー。」

持ってきていた新刊を白石に渡した撫子。それを白石は両手で受け取りそのまま片膝をついて天高く掲げた。

「部長、ライオンキングごっこせんといて下さい。キモいっすわ。で、撫子さん!俺には無いんすか!?」

「グハッ!?…ひ、光君よ…これはBLを主にしたものであって…。」

「欲しいっすわ!…ダメっすか?」

コテン、と小首を傾げる光ちゃんマジ可愛い。

「ダメじゃないダメじゃないダメじゃない!あー!畜生持ってけ泥棒!でも友達辞めるとか言わないでね!?」

財前の可愛らしさに負け撫子は新刊を財前へ渡した。

「言うわけ無いっすわ!撫子さんと俺は一生の付き合いになりますわ。むしろ結婚して――「させるかバーロー。」

今回は白石が財前の台詞を遮った。

「せや、撫子さんに会うたら渡すもんがあったんや。」

「何かね?と言うよりも来てないんだ。」

「残念ながら来とらんわ。東京まで出てくる金が無いんと、小春と年末はゆっくりしたいんやて。」

「…やっぱりその二人はガチなのかね?」

「さぁ?俺にも小春の真意は分からんからなんとも言えへんわ…っとあったあった。」

白石が後ろのダンボールから飾り気のないCDを取り出してきてそれを撫子に手渡した。

「何かね?これ…なんかのデータ?」

「おん、ユウジからのプレゼントやでー。色んな声優の声マネをして撮った…名付けて『うじうじしたって意味ないねん!シャキッとせんかボケェ!CD』や!」

「なんぞ?それ。」

「説明しよう!これはユウジが声マネの技術を持って録音した叱咤激励ボイスや!落ち込んだとき、喜ばしいとき、声優さんもどきが叱咤激励してくれるわけや!」

「何それ画期的、素敵、最高!ウジウジさんマジ惚れる!こんな素敵なもの私なんかが貰ってもいいのかしら!?」

「何言うとりますの撫子さん。ユウジ先輩が撫子さんに言うてわざわざ作ったんすわ!…まぁ、少々気に食いませんけどね。」

最後の方、ぼそぼそと呟いていた。

「うわー…こんな素敵なものをくれるなんて予想外だ…。お返しって言ってもこの本はダメだしな……あ!そうだ、後でマスターのスペース来て!」

「どしてや?」

「文化祭でのサンドリヨンのDVDが出来たからさ。ウジウジさんは来てなかったっぽいからお返しに丁度良いよね!」

「そんなんあるんか!?それ俺も貰ってええか!?」

「俺も欲しいっすわ!」

「ええよええよ!」

「撫子さん、お返しに俺からはこれあげます。」

そう言いながら財前が撫子に差し出してきたのはぜんざいPとしてのサインの入ったCD。

「うわ、どんだけ自意識過剰なんやサインて…。」

白石が撫子にバレない程度に悪態をついていた。

「おぉ!光君CD間に合ってたんだ!並べられてないから落ちたのかと思ってたよ。」

「まだ開場には時間あるんでゆっくりでええかなと思いまして。」

「あぁ、確かに…そう言えば蔵さんは新刊漁りの旅に出なくていいのかね?」

「その辺は抜かりないで!謙也に頼んであるんや。浪速のスピードスターが競歩で挑んどる最中や!」

「うわー…ドS…。」

白石も撫子も忍足家に対する扱いはどっちもどっちである。

「因みに謙也さんの嫌いな事は待ち時間すわ。」

「うわ!?ドSを通り越して鬼畜だよ!」

「やけど撫子さん…嫌で嫌でしゃーないことに挑んだ謙也はきっと涙目で帰ってくる。そん時『もう、いややぁ…!』とか懇願されてみ!?禿萌えやで…。」

「確かにそれは毛根が死滅する!正にそれって、」

「「エクスタシー!」」

思いが以心伝心でテンションMAX。
キャッキャキャッキャとはしゃぐ。

「ん?あ、もうこんなに長居を私は…!」

「あー…せやな、もう撫子さん行かんといけんな…。」

イベント参加豊富の白石は納得してくれた。

「もう、行ちゃうんすか?」

財前は撫子ともっと一緒に居たいが故にわがままを言う。

「ご、ごめんね!ごめんね光ちゃーん!」

しかしこれ以上ここで時間を費やすことが出来なくなった。撫子は後ろ髪を引かれながら白石と財前のサークルから逃げるように離れていった。

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