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「朋ちゃんに桜乃ちゃん!」 「「?……撫子様!?」」 一番近いと言ったらここのサークルでした。 「一瞬考えただろ一瞬。」 「撫子様ぁ!だっていきなり来てくださるとか知らなかったし、コスしてるんですもん、少し悩ませて下さいよぉ!」 「正直すまんかった。」 「いえ、謝る事は無いですよ!それにしても撫子様って和風なキャラ似合いますね!鬼灯様素敵です。」 「ありがとうございます。そんな良い子達にはこれをあげよう。」 あげようと言って手渡したのは撫子の新刊。珍しく純愛である。 「え!?良いんですか!?お金…。」 「要らない要らない。朋ちゃんには文化祭でお世話になったし、桜乃ちゃんにはかなりの萌えを頂いたのでね。」 「「ありがとうございます!」」 撫子から新刊を受け取り大事そうに抱きかかえる。 「そしてlove.R様の新刊下さいな!」 「「!?」」 新刊下さいと撫子が言った瞬間二人の動きが一瞬強張った。 「…どうか、したかえ?」 「ちょ、ちょっと待って下さい!」 朋香と桜乃は撫子と距離をとりこそこそと相談なう。 「ど、どうしよう朋ちゃん!」 「どうしようたって…私が提供したネタだけど…。無断で撫子様をモチーフにしちゃったキャラを登場させちゃったし…。」 そう、この二人が強張ってしまった理由は撫子をモデルにした人物を登場させてしまったからだ。 「でもでも、撫子様は欲しいって…しかも私達新刊までただで貰っちゃったよ…!」 「あぁあ!これって今謝った方が良いのかな!?」 「あ、でも撫子様はモデルが居ること知らないからだだの新キャラとして見てくれるかも!バレたら謝ればいいよ!」 「桜乃…案外図太いわね。」 「え?そうかな?撫子様、これが新刊です!」 桜乃は思い切って新刊を撫子に手渡した。 「おぉ!今回も表紙がふつくしい!…ん?」 撫子はテンションが上がり新刊の表紙を眺め、そして少々疑問に満ちた声をあげた。 「どど、どうしましたか?」 バレてしまったのかと思い桜乃はどもりながら聞いてみた。 「いや、表紙にいつもの主人公とヒロイン以外の人物が?」 「あ…それは今回の新キャラなんですよぅ!」 「そうなんだ!今にして新キャラを出すなんて策士だな!」 「「ハハハハハ…。」」 「桜乃ー…良心が痛むよ…。」 「私もだよ…朋ちゃん…。」 「で!おいくらですか!」 「「ただでどうぞ受け取って下さい!」」 「え、いいの!?」 「はい!撫子様も無料で下さったのですから!」 「私達がお金をとれるわけ無いです!」 むしろ良心が痛みすぎて更にお金をとろうだなんて…無理だ。 「そっか…なんかゴメンね?押しつけたあげく貰っちゃって…。」 「いえ、とんでもない!あ、撫子様他のサークルにも行かなくてはいけないのではないですか!?」 「ん?うん、そうだった!じゃあ私これで行くから、バイ!長居しちゃってごめんねー。」 「こちらこそ来て下さいありがとうです!」 「楽しい一日にして下さいね!」 「桜乃ちゃんと朋ちゃんもねー!」 撫子は二人のサークルから離れた。何だか藁しべ長者になった気分である。 |
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