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「聞いてくれよ。侑士さ何故かキャリー持ってきて俺にまで手荷物持たせてんだぜ!」 ほら!と言いたげに撫子に突き出す。 「あー…。ごめんね、それ私が忍足に頼んでたヤツなんだ…。」 きっと中身はウィッグだ。 「なんだ撫子のかよ。なに頼んだんだよ。あれか?龍のなんたらってやつ。」 「何故知っている!?」 「撫子が侑士に頼んでるとき俺らも居たぜ?」 「……そか。」 撫子は岳人から荷物を受け取り自分のロッカーまで持って行こうとする。 「ちょい待ち、このキャリーは持ってくれへんのか。」 「もう少し頑張ってよ。…つかそれなんかでかすぎない?」 よくイベントとかで見られるキャリーの大きさではない。 ちょっと長めの旅行とかで使われるような少し大きめの物だった。 おかしい、KAITOの衣装ってそんなにも幅をとるモノだったか? 「……家にこれしかなかったんや。」 「買えよ…小さいヤツ。 あ、そう言えば今日の相手校って何人で来るの?」 「レギュラーの8人だぜ!」 「え?でもこっちはレギュラーと準レギュラーが居るんでしょ?合わなくない?」 「その辺は監督がええよう組んどるわ。」 「へー…。ま、岳人と忍足は着替えてきなさい。もうすぐ相手校も来るよ多分。」 撫子は岳人と忍足を見送り相手校のタオルとボトルを人数分用意。 「よっし!今日も今日とてパーフェクト!」 開始時間まで後10分。 「おい、椿崎。」 「何さ、跡部。」 「相手校がもうすぐ来る。門の所まで出て待ってろ。案内してこい。」 「それが人に物を頼む態度か。」 跡部はふんぞり返り、見下すように命令。 こいつ、絶対王政の王族生まれだ。むしろあれだ。帝王学とか絶対学んでるよ。 「俺様が人に頭を下げると思ってんのか。」 「…脳みそ足りてねぇんじゃねーの?」 撫子は跡部に聞こえないくらいの声で呟いた。 「アーン?なんか言ったか?」 「いえ別に…ハイハイ、イエスマイロード。了解しましたよっと…ところでマイロード、相手校ってなんて学校?」 「アーン?お前監督の話聞いてなかったのかよ。」 「…聞いてはいたけど覚えてない。」 きっと行ってよしによって記憶が吹っ飛んだときに言われていたのだろう。 「立海だよ。」 呆れた顔で答える跡部。 「あぁ、あの二連覇してる。」 「なんだ知ってんのか。」 「ま、ね。」 「マスター」の通ってる学校だ。「マスター」から概要は聞いている。 ただ、撫子が知っている「マスター」のプロフィールは立海に通っている生徒としか分かっていない。 ネット上の付き合いでそこまで分かっているのならかなり親しく付き合っていると言えるだろう。 「まぁ、いい。正門の所へ行って待機してろ。それから控室まで通せ。」 「ハイハイ、行ってきますよー。」 |
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