青春Destroy | ナノ


301


待機している時間も何気に長い。撫子は少し離れて探検を始めた。もっと奥の方、そっちに行ってみるとそこは新雪。誰も足を踏み入れていないところを発見した。

「おおー!ダーイブ!」

柔らかそうな新雪に撫子は背中から倒れて行った。フカっとした感覚は今までに体験したことが無いようなものだった。先ほど散々運動していて身体が火照っていたので、ひんやりとしてとても気持ちがいい。このまま放っておけばひと寝入りしてしまいそうである。

「撫子さん、此処で寝るのはいけないな。」

目を閉じて雪の中に埋もれる静寂を目を閉じて感じていた時に柳が声をかけてきた。

「ん?あぁ、マスター…寝てないよ。ただ、気持ちがいいなーって。」

「そうか。…先ほどの働き見事だった。」

柳が寝ている撫子の隣に座り込んだ。どうやら柳もかまくらを製作している風景を見るのに飽きたようで撫子の方にやって来たらしい。

「マスターも素敵でした。見事な立海への裏切り。」

「いや、元をただせば跡部がきっかけをつくったんだ。俺は乗っただけだ。」

「あー、ですよね。まったく跡部は…。」

「思ったのだが、撫子さん。最近やつらへの関わり方が夏合宿の時よりも辛辣になったのではないか?」

「え?そうかな…まぁ、私が調子づき始めたんでしょ。ホラ、私って仲良くなったら本性を出すタイプだから。」

「距離を置こうと、しているのではないか?」

「…なんで?」

「いや、何となくなのだが、撫子さんの参加しているプロジェクトについて少し調べさせてもらった。だから今、距離を少しずつ置く練習でもしているのではないかと思っただけだ。」

「あぁ、…それとこれとは関係ないよ。そもそもそれは確率的には低い事だし。ありえないよ。ただ…。」

「ただ?」

「田舎の友達を裏切った感はあるかな。うん。それしかない。」

「岡山のか?」

「そうそう、あっちではさー、別れたくない。この学校で卒業したいって言ってたんだけど。こっちに来た最大の理由はイベントとかがいっぱいあるからなんだよね。それは友達にのせられた感はあるんだけどね。」

「あぁ…。」

「だから田舎に未練はないのかって言われたらちょっとだけあるって答えると思う。そんでここに未練はないのかって言われたら…イベント系を抜きにしてもたくさんあるって答えちゃうと思うんだよねー。今の私って、」

「…。」

「矛盾してるっしょ?こっちの方が田舎よりも未練があるって。まだ8か月しか関わってないのにさー、田舎の友達よりも仲良くなっちゃってる気がして、たくさんの友達なんかもできちゃって。私だけが変化してて、友達を置いてけぼりにしてる感じがしてさー。ちょっとね、前の私に戻りたくなったって言うか。オフ友で私を讃える人は居なくなってほしいな、とか。ちょっと理不尽なこと考えちゃったり。ホームシックかね。それかセンチメンタル小室マイケル坂本ダダ先生。」

「センチメンタル…撫子さん、人は変化するものだぞ。環境が変わってしまったら効果はてきめんだ。初心に帰るという言葉はある。それは簡単なことではない。仮撫子さんの考えてることが現実になったとする。そうしたら撫子自身つまらないものになると思うぞ?人間は常に新しいものを欲する。ない物を欲する。失うことは簡単だが、築き上げることは比べ物にならないぐらい難しいぞ。」

「現実的にはそうなんだよね。まぁ、我儘さ。ただ単なる。ホント、ちょっとやんじゃっただけ。新しい環境って言うかさ。新しいものを見るとなんだかやまねぇ?テンションあがり過ぎて。」

「躁うつ病か。」

「ハハハハ、精神内科行って薬貰わないとだね。」

「撫子ー!柳クーン!かまくらで来たでー!戻って来ー!」

かまくら製作所方面から忍足の声が聞こえた。
完成したらしい。

「おおー!今戻るー!」

撫子はその声に対して返事をした。

「マスター、戻ろっか。」

「あぁ。」

雪の中から起き上がり立ち上がり、身体についた雪を簡単に払って二人は元居た場所へ歩き始めた。

「かまくらの中は案外あったかいって聞くけどどうなんだろうね!」

「実際温かいぞ。保温効果で熱が逃げない。さらに冷たい風が侵入してこないからな。」

「おおー!流石マスター何でも知ってるね!」

「何でもは知らない知っていることだけだ。」

「ウハー!三次元にもこのセリフが似合う人が居るとは!」

「実際そうだろう。」

「そだね。さぁ!実証見聞だ!かまくらへゴー!」

かまくらの元までクラウチングスタート。到着してみれば立海チームが死屍累々である。代わりに幸村と滝がとても生き生きとしている。予想はついていたけどね。そしてかまくらの中は本当に温かかった。流石に氷帝チームと滝と幸村が入ったのでぎゅうぎゅう詰めである。かまくらが崩壊しないか心配である。
そんな心配はいらなかったようだ。簡単には崩れなかった。まぁ、立海チームが入る前にわざと崩してしまうイジメも出来たが流石に自重である。午後の自由時間もの頃少なくなってこれぞれの学校へと別れた。それからはご飯を食べたり、就寝の準備をしたり、トランプしたり、UNOしたり、修学旅行の様な夜をそれぞれ過ごしたのであった。

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