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「ね、忍足。今思いついたんだけどさ。」 リフトに乗り、上の方へ目指しながら会話をする撫子と忍足。 「なんや?」 「受験生がスキーで滑って、転んだりするこのシュチュエーション、シュールじゃね?」 「確かにそやうな。やけど、ほとんどが氷帝高校に持ち上がるから気にせんのやろ。」 「あー、だね。ではここで一回忍足も盛大に転んどく?ついでに漫画の如く雪玉になりながら。」 「だが断る。俺にメリットが見出せんもん。」 「じゃぁ、こっから落ちとく?」 「なんでそない俺が身体はらんとあかんのや。」 「見てるこっちが楽しいからだ!」 「超理不尽!」 「いやいや、このリフトの時間が若干長くてな、暇なんだ。」 「フ、撫子分かったらんな。こんな暇な時間こそ人間観察やろ!」 「なん…だと!?」 「その上、リフトの目線は高い!下に居る人間が見やすい!ドヤァ!」 「忍足ッ、お前は神か!よし、リフトに乗っている間だけ忍足様と呼んでやろう。」 「短ッ!」 「忍足様忍足様、あんなところに跡部が居るわよ。」 「あ、ホンマやな。」 サービスサービスゥと言う感じに撫子は忍足「様」と連呼した。それから人間観察も同時にしていたようで一人で空しく滑っている跡部を発見した。 「ぼっち、ぼっちだ!ワロスなんだけど。」 「しゃーないやろ。樺地は二年やから学校やし。後、テニス部はテニス部でいっちゃん仲ええやつとつるんどるし、女子は眺めるだけの存在やん?」 「あちゃー、忍足様、お前一緒に遊んでやれよ。お前、地味に仲いいだろ。」 「いやや、撫子とつるんどった方が楽しいもん。跡部と一緒に居ったら俺、引き立て役やん。」 「やだっ、忍足様の癖にデレるなんてなんて高等テクをッ!おかーさーん、お赤飯炊いてぇえ!」 「失礼にもほどがあるやろ!」 「ふ、呼び方を様づけにしたところで私がお前に対する態度を改めるとでも思ったのか!ついでに跡部転べ!!転べ転べ転べ転べ転べ転べ転べ転べ転べ―――。」 「撫子はどんな恨みを持っとるんや。」 「いや、恨みなど無い。が、とりあえず跡部には率先して嫌な目に遇ってもらいたいんだよ。なんだろ…存在が完璧すぎて滅べばいい!バルス!」 「確かに何やっても完璧な嫌味な奴やな。転べ転べ転べ転べ転べ転べ転べ――。」 「「あ。」」 忍足も撫子に続いて呪いをかけていたら跡部が転んだ。なんというか、目の前を滑っていた女子が転んでしまって咄嗟に避けた結果バランスを崩して転んでしまったらしい。何でも無いのよ、的な態度をとりながら女子の前から滑り去る。その時キョロキョロと他の誰にも見られていないよな、といった風に辺りを見回しながら。そんな様子を撫子と忍足はばっちり目撃してしまった。 「「…跡部ぇえ!!」」 二人で腹の奥底から叫んだ。ゲレンデに響き渡る位。跡部はその発信源を気付いてリフトの方へ向いた。 「!?」 「「ザマァ!プギャァ!」」 「テメッ、覚えとけよコルァ!」 「「だが断る!」」 なんて不毛。そうこうしている間に、リフトは到着。 「よし忍足、滑り降りようぜ。」 「ホンマにリフト限定かい…。」 「さぁさ、遊びますよ?」 「了解。」 ただ滑り降りるだけの単純な遊びだというのに何度も何度も滑り降りた。まぁ、結局は飽きる訳で、 |
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