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「可愛子ちゃんは居ないかなー。」 煩悩丸出しの撫子。これが通常運転、らしい。 「居たらまず俺が声かけるわ。」 「バカ言うな。お前みたいな胡散臭い伊達眼鏡に話しかけられたら防犯ブザー鳴らされるわ。」 「ふ…そんな俺は只今裸眼onゴーグルや!流石にメガネの上にゴーグルは無理やからなー。あー、俺イケメン。めっちゃイケメンやん。」 「イケメン滅びろ!…ッ……あー!?」 一瞬撫子の動きが止まったかと思うと、山の上の方を指をさして大きな声を出した。 「なんや!?」 それに驚いて忍足は頂上の方へと視線をやる。しかし、そこには何もない。 「…なんやったん撫子……あ!?」 「バカが見るー!ブタのケツゥ!!」 撫子は指をさした方とは逆の方に滑り降りていた。その先を見て見るとピンクのスキーウェアを来た人が体操座りをして蹲っていた。撫子は忍足を出し抜こうとしただけの意味のない行動をとっただけであった。それにまんまと引っかかった忍足ワロスである。 しかし、こんな中腹部で体操座りをしているのだろう。足でも痛めたのか? 「Heyかーのじょ、どうしたの?足でも痛めた?」 「…………………………。」 体操座りで下を向いたままこちらを見ようとしない。 「……。」(返事がないただの屍のようだ。) シカトこかれた。やっぱ警戒しているのか?撫子を男だと思って。 「なんや撫子ー。フラれたんか?」 そんな気まずい空気の中登場した忍足。 「黙れアイデンティティーを自ら捨てた男子。お前どちら様?」 「ちょ、それは酷ない?にしても彼女、ホンマどないしたんや?気分悪いんか?」 「…………。」 「すみません、お二方。その方は私の連れでして…。」 「「柳生君!?」」 連れだという言葉が背後から聞こえ、男の声だったのでリア充かよ。とか思いながら振り返ってみるとそこには立海の柳生が居たのだ。 「おや?忍足君に椿崎さんではありませんか。」 「と言う事は…お前、仁王か?」 「……プピナッチョ。」 「やっぱりかぁあああい!」 「私達の他に学校が居るとは思いましたけど、まさか氷帝とは思いませんでしたよ…。」 「ごめん、私他の学校が団体さんでいること知らなかったよ…。」 午前中はそれなりに真剣に滑ってたからね。 「立ち話はなんです。下に降りましょう。幸村君達も居ますし。」 「だね。挨拶ぐらいはしておかないとねー。」 話はまとまり立海へ遊びに行くことに。しかし、仁王が一向に立ち上がらず、下に降りることが出来ない。 「では仁王君行きますよ。」 「俺、ここにずっと居る……。もう転びとうない。」 「そんなこと言って…だったら一生ここに居るつもりですか?」 「……どゆこと?仁王まさかスノボ滑れないの?」 ニヤニヤと撫子がにやけながら問う。 「じゃからなんじゃっていうんじゃ!」 「濁点多すぎじゃ!ちったぁ標準語喋れや!」 「俺のアイデンティティ!」 「つーかお前がピンクの服着てるのは何?ハイカラですね。」 「……。」 「私から説明しましょう。まず、仁王君はスノーボードが滑れないだけであってスキーは出来ます。ピンクの服につきましては仁王君のサイズのメンズが足りず、女性用の物をレンタルさせていただいたのです。」 「おい、忍足!宍戸がここにも居たぞ!」 「せやな。」 「…椿崎が着とる奴、メンズじゃろ!交換してくれ!」 「だが断る。ピンクは私の趣味じゃないしー。つーか買ってくればよかったんじゃねー?」 「そんな金あったらコス資金に回すぜよ!」 「同禿。しかし、てこでも譲らん。仁王、渡る世間は鬼ばっかなんだ。甘えちゃいかんぜよ。つかお前に私のデレはやらねー。忍足や柳生君とかに譲ってもらえばー?」 「忍足ッ!」 「え?いやや。」 「仁王君、これがせしがない世の中と言うもの。さぁ、居りますよ。自ら滑り降りないのなら転がり落とします。」 柳生が紳士にあるまじき台詞を言い、仁王はシャキッとその場に直立した。それからゆっくりと滑り始めたのだが、まるで生まれたての小鹿のようである。撫子はムービームービーと言いながらカメラを構えながら滑った。なんて器用なことをしているのか。 そんな感じでやっとのこさ降りて行って立海のメンツと対面した。 |
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