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悲鳴が聞こえないから不思議に思った日吉が顔を上げるとそこにある顔は撫子と鳳だった訳で、まさか知り合いとは思わなかった日吉は速攻で素にかえり立ち上がる。 「鳳!なんでわざわざ赤外線に触れた!」 「え!?だって椿崎先輩に説明をって…。」 「そんな事一々しないでもいいだろう!バカか、お前実はバカだろ!」 「それはちょっと酷いんじゃないかな!いくら俺がワザと赤外線に触れて日吉のお化けの演技を見たいからって…あ。」 「ほう、下心があったというわけか。ふざけるなよ鳳…。」 「理不尽だよ!なんで他のお客さんには演技を見せて、俺達には見せてくれないわけ!?」 「ぐっ……それは…。」 「恥ずかすぃんですよねー!」 歯切れの悪くなってしまった日吉の代わりに撫子が答える。 「いやー、分かるよその気持ち。私も恥ずかしかった時代あったからねー。今でも不完全だったら恥ずかしいがな!」 「何の話してるんですか!もう次のとこ行って下さいよ!」 バカァ!と言いたげな表情を浮かべ撫子を睨んでからスタスタと井戸の中へと隠れていった。 「…日吉くーん出ておいでぇ。」 まだ日吉のお化け姿を拝んでいたかった撫子。あの顔を真っ赤にしてこちらを睨んできたあの表情をもっと見たい撫子。よく暗闇で見えたな撫子。そんなわけで日吉を呼んでみる。 「…………。」 「出てきませんね。」 「うーん……十枚目のお皿は私が持ってますよー?」 撫子がそんな事を口走ってみたら日吉がピクリと反応した。 「へ?先輩どういう事ですか?」 「いや、番町皿屋敷のお菊さんの成仏呪文的な?」 「日吉って貞子をしてたんじゃないですか?」 「逆に番町皿屋敷知らねーのかよ!」 「あまり日本妖怪は…外国のお化けの方が俺は好きです。」 「…もう少し自国に愛を持とうぜ……。」 「椿崎先輩。」 撫子が鳳とだべっていたら日吉がひっそりと撫子の後ろに気配無く立っていた。 「ひっ!?よし君じゃないですか。井戸から出てきてくれたんですね。デレ期か、デレ期なのか!」 「先輩は皿屋敷知ってるんですか?」 「え、まぁ…一般常識的には…むしろそれよりは知ってるかな?」 ネタ集めは多ジャンルに渡ります。 「…それが嬉しかっただけです。鳳もですけど知ってくれている奴が居なくて……。」 「あー…まぁ確かに井戸と言ったら貞子だからなぁ。お菊さんはマイナーになってしまうか…。」 「俺はお菊さんの背景にある歴史の風潮描写もあって好きなんです。」 「ですよねー!」 「…気が変わりました。俺が案内してあげますよ。この迷路でお勧めのコースを通って。」 「え、いいの!?でもここのブースはどうすんの?」 「鳳、代われ。」 「えー、俺これから宍戸さんのクラスに行こうと思ってたのに…。」 フラグがここに乱立ちした。しかし当の宍戸はジローにまだ沈められているはず。 「鳳、宍戸は今睡眠中だからもう少しして行きなさい。」 「え?そうなんですか。分かりました。日吉、変わってあげるよ。じゃあ椿崎先輩、楽しんでくださいね。」 「おん!今まで案内ありがとう。日吉、案内頼んだ!」 「分かりました。では行きましょう。」 日吉の顔がものすごく邪悪めいたモノになった。ものすごく、怖いです。 |
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