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三年C組の前を通ろうとしたとき、出入り口には羊の置物が鎮座していた。見るからにモフモフしていて触ってくださいと言わんばかりだ。撫子はモフモフしてやろうと手を伸ばしたら羊の顔がグリンと撫子に向いた。 「あ、撫子だCー!」 「うわ!?ただのプリチーな置物だと思っていたけどそのマジ天使ボイスはうえだ…じゃなくてプリチージローだC!マジ可愛い!」 「エヘヘヘ、この中モフモフだから寝ちゃいそうなくらい気持ちEよ!」 「そんなジローを見て私は禿げそうだよ!」 「癒やされるでしょー?だってここはマッサージ屋でー、リラクゼーションー。」 「マジ癒やされる!もうジローの存在がマジ天使!」 「エヘヘー、嬉Cー。」 「可愛ゆすなぁ!でもジロー?店番はちゃんとしないとダメでしょ。ついでにモフモフさせて下さい。」 「んーEよー。」 「あざーす!」 お言葉に甘えて撫子はジローを…ジローの着ている羊の着ぐるみをモフモフする。これは良いモフモフだ。 「おいジロー!お前店の前でいつまで寝てんだよ!さっさと宣伝…椿崎っ!?」 教室の奥の方からジローと叫ぶ声が聞こえてきた。この声は宍戸だと完璧に理解していたのだが、今のその姿はいつもの宍戸からは想像しがたい物があった。 撫子の姿を確認してしまった宍戸は硬直。次の動作がない。 「……宍戸…。」 撫子がらしくもなく目を背けている。それだけ宍戸がジローと同じ様なモフモフの着ぐるみを着ていたことにショックを受けているのだろう。しかも羊の頭は取ってある。滑稽さ丸出しだ。 「…っなんか言えよ!なんかコメントしろよ!逆に何も言ってこねぇ方が激イテェよ!」 照れを隠すように叫び倒す宍戸。それもなんだか痛々しく見えてしまった撫子は目を細める。 「…うん、文化祭だものね。羽目外したくなるよね。…うん。」 ジローと言う最終可愛い兵器のモフモフを先に見てしまったからだろうか、宍戸のモフモフがイマイチ萌えない。萎えないがネタにしか見えなくて…見た瞬間に笑うことが出来なかったから爆笑するタイミングも完璧に失ってしまった。 「いっそ爆笑してくれた方が気が楽だぜ!」 「んー…宍戸うるさいC。ちょっと寝てて。」 ジローが不機嫌そうな口調で話しながら宍戸の首に手刀を思いっきり叩きつけた。 「グハッ!?」 宍戸が無念にもログアウトしてしまった。 「ジローくーん!?」 「秘技、睡眠のツボだC!」 「いやツボじゃねーし!物理的に沈めていってるよね!?レベルをあげて物理で殴ればいいみたいなテンションだよね!?当て身だよ!?A TE MI!」 「撫子も食らってみたい?俺上手いよ!」 シュッシュッと手刀の素振りをするジロー。外見は可愛いのにしている行動は遙かに怖い。 「遠慮致しまするぅ!」 撫子はこれから文化祭も楽しみたいこともあって技を食らうのだけは回避した。 |
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