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忍足の反応を軽くあしらって教室を出た。人でごった返す。一般の人々も入場可能であるためでもある。運が良かったら他校のメンツに会えるかもしれない。 「さぁ!宣伝と称していろんなクラスに遊びに行こうずっ!?」 背中に強い衝撃。何度目のデジャヴだ。 「撫子さん!ちょっとぶりっすわ!」 「久しぶりやー椿崎。」 「前回は世話んなったなぁ。」 「出たな!イケメン三兄弟!来てくれてありがとよ!」 「いやいや、もう今日という日を俺は何度指折り数えていたか…。」 「私の時は指折り数える暇さえなかったけどな。」 「アハハハハ…すまん。」 「ハハハ…ごめん。ところであの子猫ちゃんはどうなったのかね?」 「心配せんでもええで。別にいじめも何もない。ちょっと前の平和な学校に戻ったわ。ただ、その女子は撫子さんの信者になったけどな。」 「何故そうなった!?」 「椿崎庇ったやろ?やからそれに惚れたちゅー話や。」 「……えー、マジでー…。」 「そんなん当たり前やないですか。撫子さんはこんなカッコええんですから!」 「ウヘヘ、照れるじゃねーか。そうだ、なんで分かったんだい?私、ぱっと見別人だと自負してたんだけど…。」 「簡単や、ドパンピ学校でKAITOの格好しとったら目立つで。」 「それに謙也さんが『氷帝テニス部はサンドリヨンっちゅーもんの独自の解釈で演劇するらしいで』って言うとりましたからそれを目標にした節があります。」 「なんという盲点!あ、演劇は明日だよー。」 「知っとりますよ!明日も勿論来ますわ!」 「じゃー君達は泊まりがけかい?」 「おん、侑士の家に泊まらせてもらう予定や。」 「いいねぇ、親戚が都会にいるなんて…私なんて去年まで田舎だし親戚居ないしで夏と冬の祭典への参加は諦めてたって言うのによ!」 「やけど今年は行ったんやろ?」 「おん、テラ楽しかった。」 「やったら良かったやん。」 「ま、ね。君達は今日明日楽しんでねー。私は宣伝に回らなきゃだからー。」 「やったら一緒に!」 「財前、今回はダメや。仮装しとらんのに歩いとったら撫子さんの迷惑になるやろ。」 「んー…だねぇ。今回は予備の衣装無いし……明日劇に使う予定のドレスならあるけど…。因みに私は午後からステージにわまるが、それを君達が着てしまったらクラスに拘束決定だからね。私のクラスの人はそんなカモを逃がさねーぜ。人手はあってもあっても足らないからね。」 「クッ…遠慮しますわっ。」 「じゃ、そう言うことで。椿崎、頑張りぃやー。」 「おぉ!暇があったら私のクラスにも来てくれ!12時あたりに少しだけ店員をする予定だから!」 「その時間に行かせていただきますわ!」 未練たらしそうな財前を白石と謙也が引きずって他の模擬店目指して歩いていった。それを見送ってから撫子は歩き出す。 と、ある教室の前を通ったら人で溢れかえっていた。 「あー…予想はつくからシカトしよう。」 「アーン?椿崎、俺様の企画に酔いしれていけよ。」 「だが断る。だって既に酔いそうだもん。なんなのこのえずきたくなる匂い。バラ?って言うかその格好出オチすぎる。」 撫子の視界に入ってきた跡部。その跡部は真っ白いスーツを身に纏い、真っ赤なバラを胸ポケットにさしたり優雅に抱えていたり、とりあえず、とてもバラ…である。 なにこれ薔薇の擬人化? |
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