青春Destroy | ナノ


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裏方から暴れる物音が絶え間なく流れてきた。何事か、と一瞬騒然としたが直ぐにみんな気にならなくなったご様子。物音がしなくなって約30分後。再びうさぎの着ぐるみをまとった撫子がヨロヨロとしながら出てきた。それに続いて、女子二人と小春が出てきた。

「はー、楽しかったわ!ユウ君時間やから行きましょ!」

「おん!」

一氏と小春が一足早く体育館へ移動した。女子達もテンション高く「楽しみにしてます!」と言いながら去っていった。

「……大丈夫か?」

「謙也君…今日の朝、ごめんマジゴメン、ごめんなさいでした。よりよい土下座を追求した姿勢、逆立ちをするので許して下さい。」

「や…別に……俺の方こそ…すまんかった…。」

「よし、じゃあ撫子さん行きますよ。」

財前が撫子の腕を持って立たせて引っ張りながら体育館へ向かわせる。それに続いてテニス部の大移動である。

「…光……自分鬼か。」

「光君ー、本当に私必要なのぉ?もうこれ二度と着るつもり無かったのに…。」

二人がブツブツ言っていたが財前の耳には届いていない様。そんな撫子を不憫に思ったのか、撫子の真横を走っていた小石川と銀が頭をポンポンと撫でてくれた。いや、着ぐるみの頭を撫でてくれた。

「…小石川君、石田君……惚れてまうやろ…トゥンク。」

「それは勘弁や。財前怖いねん。」

「財前はんの嫉妬は謙也はんでも辛い様やからな、ワシらは耐えられへんねん。」

「……そですか…。」

話しながら撫子一行は体育館の舞台袖へ到着。

「じゃあ撫子さん、俺は放送室ジャックしてきますから。」

「はーい…行ってらっしゃーい。」


「あ、白石君!来てくれたんやな!」

コピーキャットが登場。ご丁寧に撫子イメージ衣装も着ているのだが、撫子が来ているのより安っぽい生地である。逆にチョココロネが作った服がハイクオリティ過ぎるだけの話だ。

「おぉ、その衣装…。」

「あ…あんま見んといて、恥ずかしいから。」

照れ照れ、ともじもじする女子。ただ普通にしているだけなら萌えてしまうのだが、名を騙っていると思うと吐き気をもようしてしまうわ。

「…すまん。」

「でも、白石君の為に私、歌うの頑張るから!じゃあ、出番やから。」

ステージの方では一氏と小春の万歳が終了したらしく、大きな拍手に包まれていた。入れ違いに戻ってくる。

「小春くーん、ウジウジさん乙ー!」

「おん、ワタシら終わったけど…ついに、やんな。」

「…うん。あの子猫、インカムしてやがったから簡単に引っかかってくれるよ。」

「撫子さん、撫子さんはこれから笑顔動画の撫子さんにやるんや。あの時の感じ、思い出しぃ。」

「ウジウジさん…ありがとう。私、頑張るよ。」

会話をしていると曲が流れる。それにあわせてパントマイムをする女子。真実を知っているものが見たら実に滑稽な状況である。
サビにかかるタイミングで財前が機会を操作し、曲を止めた。突然、曲が止まったため、観客側はざわつき始めるが、インカムをしている女子は気付いていないようで動きを止めない。インカムには絶えず曲が流れるようにしているからだ。機械に強いってこういった小細工が可能だから便利だね。
その様子を止めるため撫子がステージ上へ。それから女子の肩をたたいてプレートを見せる。

『音楽、流れてませんよ?』

「え!?」

女子が慌ててインカムを取って確かめる。本当に流れていない。

『今までの口パクだったんですか?』

「な、なんやアンタ!自分の仕業か!」

『厳密に言えば私の仕業じゃないよ。』

「撫子にこんなことしていいと思って良いと思っとるん!?」

「そう、それ…その名前返してもらうよ。その名前、私のだから。」

言葉を発しながら頭を取る。そこから現れる顔はまさしく撫子のもの。いや、撫子だから当たり前だけど。

「まさかっ本物!?なんでこんな所に!」

「そう本物。聞けよド三流、俺とお前の格の違いって奴を見せてやる!」

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