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「やー、撫子さん助かったわぁ。」 白石がポッケから溢れ出る千円札を取り出しながら声をかけてきた。 「うわ、白石えげつなっ!グロいわ!その札の量!」 「喧しいわ謙也、撮影一回に付き500円とか金取るんはメイド喫茶の花形やろ。自分こそ撮影おkにしたらこん位貯まったんとちゃうか?周り見てみぃや。」 白石に促され謙也は周りを見渡す。そうすれば午前一緒に勤めていたメンバーが札束を数えているではないか。 「なんでみんな写真撮られとるんや!?恥じらいは無いんか!?」 「はぁ?謙也さん。自信なくて女装なんて誰がしますか、俺のこの男の娘の姿を見て、女として負けた…って思えばええんすわ。あー……謙也さん、俺のこの格好…似合ってませんか?」 上目遣い財前。 「っ…や、その可愛い…で?」 そんな様子を見た謙也。理性ではこのゴスロリ娘は財前だと分かっているのだが、本能には負けてしまいますよね。 「まぁ、勿論可愛いんは謙也さんですけど。」 「ハッ!?」 「「萌えぇええ!謙也×光しかも誘い受けのヘタレ攻め!と見せかけて光×謙也の下剋上ぅううう!!」」 思わず叫ぶ撫子と白石。仕方のない生理現象だと思うよ。 「あ!?…光、狙ったやろ!また椿崎に喜んでもらおうと!」 「当たり前ですやん。それ以外に謙也とフラグ立てるわけ無いですわ。むしろ撫子さんとのフラグを立てるのに忙しいんで。」 「おまっ…あ!?椿崎今写真撮ったな!?」 「ゲッ、ばれた!っぎゃあ!」 カメラをこっそり構えていたのがバレてしまった。謙也はデジカメを撫子から引ったくる。 「貸せや!写真は嫌や言うたのに…こーなったら本体ごと燃えるゴミにしたるわ!」 「いや、ちょっと待て謙也君よ。」 謙也の腕をガシッと掴み、撫子は神妙な顔をしていた。 「なんや!」 「それは萌えるがゴミじゃない。腐ってはいても、必要なものだ…と言うことで奪還!」 撫子は流れるような動作でデジカメを奪いそのまま自身の着ている着ぐるみの中へ保管した。 「ぁあ!しもうた!」 「フッフッフ、奪えるもんなら奪ってみろや!ただその光景は○姦に見えるがな!私は死守するためには叫び倒すぞ!」 「その単語女子が言ってええ単語とちゃう!」 「大丈夫だ、私は女でも賞味期限切れてるから。」 来いよ、と手招きしている撫子。物凄い挑発なのだが謙也は乗らない。何故ならさっきから謙也を睨んでいる二つの眼があったから。 「っ……。」 「さて、謙也対策はこれでおk…で、さぁ!みんな!写真撮らせてぇえ!」 撫子が柳生のレーザービームさながらのフラッシュをたかせながらとても良い笑顔で問う。みんな快く頷いてくれた。 もう、発狂しても良いですか? 「あー…満足。一本満足。」 何十何百と撮ったところでレーザービーム撫子verが止んだ。 「そら良かったわ!でな撫子ちゃん、午後からは店番はせんでええんやけどな。客寄せのために校内移動中は看板担いで回って欲しいんやけど…ええかな?」 「ええよ、ええよ!」 撫子は再びうさぎの顔を被って看板を受け取る。 「「俺、撫子さんと見て回るわ(回りますわ)。」」 「「………。」」 同時に申し出る白石と財前。引っ込んでろ、と互いに睨むが引かない。 「…よし、じゃあ三人で回ろう。」 無理矢理解決させて、教室を出る。 「…ん?そう言えば私、別にここの生徒じゃないから看板担いで練り歩く必要性無くね?」 「撫子ちゃん。気にしたら負けよぉ?」 「ハーイ!」 よく考えればこの格好をしたきっかけも小春だった気がする。小春…策士か!やり手過ぎて太刀打ちできないよ。 そう思いながらチラッと小春の方を見るとニンマリと笑っているのに品を感じさせた。着物と相まって、かなり素敵な絵になっている。 「小春君…ふつくしい!」 「あんら、ありがとうね!さ、さ!頑張ってらっしゃい。」 |
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