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「思ったよりも早う終わったし、俺らは開会式参加の免除申請もしたし…早速撫子さんに呼ぼうとせんかった理由話そうか。」 「そだよ!私嫌われたのかと悩み過ぎて禿げるかと思った!後、私の名誉って何!?名誉って言えるほどのものが私自身ない気がするんだけれども。」 「まーまー、順番に話すから…。もちろん始めは呼ぶつもりやった。やけど…撫子さんの名誉を汚す輩が今回の文化祭でしでかそうとしとるんや。」 「名誉を、汚す?」 「せや…笑顔動画で名を馳せとる撫子さんは、自分や言う輩がな。所謂コピーキャットが出て来たんや!」 「な!?」 「それからそいつは文化祭でプチライブしたる言うとるんです。今その女は撫子さんの名を語ってちやほやされてます。ホンマ腹立ちますわ……そんなわけで撫子さんだけにはこんな愚かなことが起こってるやなんて知られたくなくて、呼ばんとこう言う判断になったんすわ。」 「………ハァ…コピーキャットってお前…成り代わりってお前……。夢小説だけのワードにしておこうぜ…。みんな、信じちゃったんだ?つかなんで私の認知度100%なの?」 「認知度が高いのは校内新聞で部長がインタビュー受けたときにポロッと言ってしもうて、みんなが調べて知った訳ですわ。信じた理由はその女がまぁまぁ綺麗でまぁまぁ身長もあって…それから証拠に歌う。とか言って体育館で歌披露したんすわ、まぁ撫子さんの音源をそのまま使ってました。エアリサイタルっすね。そら歌声はまんま撫子さんになりますわ。」 「…mixで分かってくれ!」 「パンピにそんなこと言っても理解されんのんすわ。」 「ジーザスクライシス!」 「ほんでそんな不愉快極まりない女をこの晴れ舞台で恥かかせたろう思うて、そんな現場撫子さんに見せとうなくて苦渋の決断で撫子さんを来させまぁと…な。」 「理由は分かったよ。……どちらにせよやんちゃし過ぎた子猫にはお仕置きが必要だよねぇ?そのプチライブっていつから?」 「閉会式の前やで。ステージ部門のおおとりっちゅー話や。」 「ほう、時間にはゆとりがありますな。」 ニヤァっと含み笑いを浮かべた後で撫子は普通の笑顔に戻る。いや、萌えが目の前にいてそれをロックオンした様な笑みを浮かべた。 「ってなわけで!それまでここで楽しませていただきますわ!女装男子、女装喫茶…テラ萌えるじゃない!」 キャラの移動が激しい。 「お、おぉ……じゃあみんな、テニスも文化祭も勝ちに行くで?勝ったもん勝ち…。」 「「「楽しんだもん勝ちや!」」」 そうして始まったテニス部の喫茶店。流石イケメンの集まり、速攻で人が群がる。忙しさが増す中、小春が教室の隅っこで静かに悶えている撫子に声をかけた。 「そうや撫子ちゃん!撫子ちゃんもー仮装してみん?」 「ん?なんの仮装?」 「むしろどれがええ?」 どれがええ?と見せてきた衣装は選り取り見取り、撫子は目移りしながら選ぶ。 そして心躍ったのは、 「これ!これがいい!」 「んまぁ!やっぱ撫子ちゃんやね。選ぶ思うたわ!じゃ着ましょう!」 小春に手伝ってもらって衣装を着る。着終わって、忙しそうなフロアに出て行く。そして注目の的である。 「え……もしかして…撫子さんか?」 なぜ疑問系。なぜなら撫子はプリティなうさぎの着ぐるみを着てるから一見誰だか分からないのである。撫子はどこぞの宇宙マスコットのようにプレートに文字を書いて会話。 『です!このまま手伝うわ!手伝うから後で写真撮らせてー。』 「お安いご用や!」 撫子のサポートも入り午前中の客のつかみは上々である。某夢の国のマスコットの動きを参考に動くことにした。あとどうでも良いことだが、この着ぐるみの肌触りめっちゃいい。 何やかんやしていたら何時の間にかお昼。午前担当だったレギュラー陣だったから午後担当のメンバーに替わる。午後からはウケ狙いの運営方法だと言う。客の対象は男子。午前の対象は女子。うーむ…目敏い。この方法は見習うべきだな…。 「あー暑い!乙!」 うさぎの顔を取って一息。11月だけど、着ぐるみの中は蒸す。 |
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