青春Destroy | ナノ


024


「忍足、大丈夫?重かっただろ。私身長あるし。」

そう、身長が高いから決して軽いとは言えないのだ。

「おぅ!重かったで俺の腕もうボロッボロや!」

今だ両腕をプラプラさせている。

「あ゛!?女子には『重くなかったよ。俺鍛えてるし』とか言えよ!重いとか女子にとって禁句だぞ!」

忍足の胸ぐらを掴みあげる。

女子って誰や?さっきの子等か?
とボケたい忍足であったがそんな雰囲気ではなかった。デッドオアアライブだ。そんな状況。

「でもビックリしたでいきなり『抱いて!』とか言うんやもん。主語と述語、修飾語はきちんと使おや。」

秘技『話を逸らす。』

「………だって急いでたし。」

撫子は物凄く顔を歪めながら返答する。話を逸らされたことは気に入らないが、自分が重いことは事実だしと自分の中で整理する。しかし、釈然とはしなかったようだ。

「でも俺的にはどんな風なカップルで行くかの話の時の単語が飛び交ってる様の方が不思議だったな。」

「あぁ、あれ?ギャルゲに有りがちな落とす直前コントで!ってやつ?」

「そうそう、あれでよくあそこまでためらわずに演技が出来るなと。」

「せやー、俺も撫子がギャルゲを知ってるとは思わんかったわ。」

「ふっ………ジャンルをまたにかけるそれが俺!」

ビシッと決めポーズをする。

「……ギャルゲやる女って何か嫌やな。」

「なんだとー、登場人物の女の子達可愛いヤツあるじゃん。何て言うの?庇護欲駆り立てられる!」

「確かにな!」

「ねぇ、二人とも。宍戸が面白い顔になってるよ。」

宍戸はポカーンとした顔になっていた。滝の声で正気には戻り顔も引き締められたのだがもう遅い。滝のカメラに納められている。

「なんで…ここに居んだよ。」

「私が発見したんだよねー。始めはただの告白かと思って覗いてやろうとね。」

「で、俺らが撫子が校舎の方へ走っていったのを見かけて後を追ったんや。」

「よくよく清楚系女子を見るとメイクガッツリだし、これは作ってるなと思って。」

「まさか無理やりキスをせがんでくるなんて思ってもみなかったけど…俺はあのまま見てる方が楽しそうって思ったんだけどさー、撫子と忍足の面白い演技見れたから良いとするよ。」

「まぁ、結論として?」

「言いたいんは、」

「「「女見る目無さ過ぎ。」」」

声をそろえて三人が呆れた顔をしながら宍戸に向けて言い放った。

「清楚系作ってるって分かった時点で何か企んでるって思わなきゃ。のこのこ人気のないこんなとこまで連れてこられちゃってさぁ。」

「流石宍戸や、撫子をただのミーハーだって言いのけただけあるわ。」

「んだよ…バカにしに来たのかよ。」

「バカにはしてないさ。」

撫子が宍戸と目線を合わすようにしゃがみ込み片手を差し出す。

「確かに今回宍戸はハズレくじを引いたよ。けどこれで女嫌いにはならないでほしいな。女子はあんな子ばっかじゃないし、人類の半分は女子だし(もう半分の男子とくっついても良いけど)。」

宍戸は出された手に手を乗せる。

「…悪かったよ。ミーハーなんて言って、あと助かった。ありがとう。」

情に厚い男宍戸。お礼はきちんと言います。

「いいいっいいのよ!そんな気にしなくても。」

ツンデレきっっったぁぁあ!これは、今回は日吉のあのツンデレよりも破壊力がある物であった。軽くご飯五杯いけるくらい。さっきまで自分につんけにしていた人が態度を改めるとヤバい。

「だからさ………。」

撫子は宍戸の手を両手でガシッと掴む。

「宍戸のファーストチッスは鳳にあげてね!」

「………は?」

「だからね、ファーストチッスは鳳に!事故チューが始まりでも良いと思うの!転んだ拍子にこうチュッと。んでその時はわりぃ!で二人とも済ませちゃうんだけど、それをきっかけに二人が意識しあっちゃってだんだん触れたいと思い始めちゃってもうキャー―――――――!!」

妄想炸裂の撫子。誰にも止められない。沈静化するまで待て。

「なっ…は?はぁ?」

「な、言うたやろ?撫子はミーハーじゃないて。」

「いや、それはもう認めたって。俺が聞きてぇのは――、」

言いかけたところで忍足が止める。

「撫子は生活上は無害やけどある意味で有害や。放っとけば収まる。」

「宍戸、触らぬ神に祟り無しだよ。撫子は神ではないけどね。」

「…はぁ。」

無理やり宍戸を納得せる。

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