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撫子は亜久津の背後に隠れてコートまで移動した。すると千石が亜久津と壇の姿を捉えたらしく、此方にやってきた。 「やぁ、亜久津やっぱり壇君が迎えに行かなきゃダメなわけね?って言うか!美人なお姉さん行かなかった!?ちょっと目つきが鋭い感じの!運命的に二回も会えたって言うのに、君ん家に行くからって…アンラッキー……。」 ショボンと亜久津に愚痴る千石。そんな千石の言い分を聞いた亜久津はとてつもなく険しい顔をして千石の胸ぐらを掴み上げた。 「テメェ…お前みたいな分際で撫子さんに声かけても言いと思ってんのか?ぁあ!?」 「え、なんでそんなに怒ってんの?撫子さん?彼女撫子ちゃんって言うんだ!…ん?あぁ!亜久津がちょっと前に俺の嫁って言ってた人か!やー…すっきりした。どっかで見た事あるって思ってたんだよー。」 撫子が今この場に居ないと思って千石が亜久津にとって知られたくないことまで言ってしまった。亜久津は赤鬼のような形相になり握り拳を作る。 「ッてめ!」 目の前での暴力沙汰は勘弁。撫子は止めに入る。檀はあわあわ、と他の人を呼びにかけだしていった。 「ちょちょちょ、亜久津様ぁあ!落ち着いて!」 「!?撫子さんに庇ってもらっちゃったラッキー!」 「何を言うか!私は亜久津様のシルバーアクセの創作動画がみれなくなると思ったからでだな。それから白菜さんが私の嫁じゃぁああ!」 えっへん、と言いたいことを言ってとても誇らしげだ。一瞬この場の空気が固まった。その時に丁度壇が帰ってきた。他、二人の先輩を連れて。 「ダダダダーン!撫子さん大丈夫ですか!?」 「もちばち無傷!」 「コラ亜久津!何度学校内で暴力行為を働くなと言ったら分かるんだ!」 ずば抜けた特徴を持ってはいない男子と、 「チッ。」 「千石先輩、また亜久津先輩を撫子さんネタでからかいでもしたんですか?懲りませんね。」 サングラスをかけた褐色の肌の口調からして後輩の少年が来たようだ。 「ハハハハハ…ハイ……。」 「亜久津も来るなら始めから来い、練習はとっくに始まっているんだぞ。千石もそれは身から出た錆って言うんだ。暫く反省しておけ。で、撫子さん…ですね?初めまして山吹中テニス部部長、南です。」 「え…あ、ご丁寧にどうも。椿崎撫子です。」 「今日はすみませんでした。うちの部員が巻き込んでしまって…。」 「…事の発端は私が壇君に絡みに言ったことが原因でして……。」 「じゃ、どっちもどっちだったってことで。」 「はい、そうですね。」 …なんだろ…物凄く安心できるこの人。謎の安心感だよ! 撫子が謎の安心感に浸っている隣では千石が後輩に怒られている。 「まったく、今日は部活がある日って分かってて女子に絡んでいったんですか?救いようがありませんよ。」 「やー、町で一人で居る女の子に声を掛けないだなんて失礼じゃない!」 お前はラテン系か。 「限度って言う物を知って下さい。実際部活にだって遅れてきたじゃないですか。」 「10分だけじゃーん!許してよ!」 「別に怒ってないですよ。ただ…遅れてきたら、千石先輩にテニスを指導してもらう時間が少なくなるじゃないですか…。」 「室町君っ!俺は優しい君が大好きだ!」 千石は嬉しそうな顔をして室町と言う名の少年に抱きついた。 が、すぐに逃げた室町。 「なにしてるんですか!馬鹿じゃないですか!?」 それを追いかけていった千石。 …うへへへ、ツンデレ御馳走様です。女好きってスキンシップも同性間でするのね。ごめんね、さっきまで毛嫌いして…君はフラグ建築士として活躍していってくれ。 「南、ちょっといいか?」 入れ替わりに背の大きい男子が南に相談事があるようでやってきた。 「あ、撫子さんちょっとすみません。」 南は撫子に一言言い、男子の方へと言った。そして程なくして南が戻ってきた。 「三年が揃ったからこれからどんな練習をするかちょっと話してきました。」 「あ、そうなんですか?ところで先程の男子は…?」 「あぁ、東方です。俺とダブルスを組んでて頼りになるバディなんですよ。」 頼りになるって……実に御馳走様です。フラグバリバリじゃねーの。しかもなにあの身長、南君とも結構差があるようだったし…最高。山吹って物凄く安定感があるね。 「良かったら見ていきますか?つまらないかもしれませんが…。」 「え、良いんですか!?是非!」 撫子は部長の南にも見学の許可をもらい堂々と見学できることになった。 |
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