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やっと本格的に始まった撮影会。みんな玄人の為、撮影会は順調である。勿論被写体になってない間も、各自で撮り合いをしている。不二の案内のためにここに来ていた裕太はその風景をぼー…っと椅子に座って眺めていた。木更津兄弟が被写体になっている間、撫子は仁王をイジりまくっていたが、飽きた。 ので、裕太をターゲットにロックオン。 「裕太君暇そうだねぇ。つまんないなら寮に戻っても大丈夫だよ?」 「…いや、つまらなくはないです。皆さんが…と言うより先輩がいつもと違う格好をしているので新鮮ですし…。」 「確かに確かに、Aさんに至っては女装だしねぇ…萌え。」 「ハハハ、…撫子さん。」 「何かね?」 「俺、止められなくてすみませんでした。」 何故かいきなり謝り出す裕太。何故だ。 「何故謝る!?……あー…都大会の頃の偵察の事?別に気にしてないよ。もう会うことは避けることにしたしね。うん、裕太君が謝ることではないよ!」 「あー…ぁー……取りあえずすみません。」 「?」 それでも謝ってくる裕太。どれだけ優しい子なんだ。 「ねー、撫子さん。次は撫子さん撮るよ。と、…ペテンさんも、フフッ。」 不二が木更津兄弟を撮ることに満足したようで次は撫子と仁王の出番である。 「ウィー。ほらペテンさん、やるよ。」 「…イエッサー……。」 順調に被写体になる撫子と仁王。少々仁王のポージングが男らしくなることもあったが、すぐに修正。撫子の男子のポージングはパーフェクト。 「んー……。」 不二がカメラから目をずらして、悩む素振りを見せた。 「…どしたの?」 「あのさ、はっきり言って花がない。リンやメイコも居るけど、僕の欲しいのはそんな大輪の花じゃなくて、小さい花が欲しいんだ。」 「まー…確かに、可憐な花が欲しいよねー。でも桜乃ちゃん無理って言われたから仁王を誘ったんだよねー。」 「俺を一番に誘ってくれたんじゃないんじゃな…。」 「…だってCPが……。」 「そうだ、AさんBさん誰かコネを使って呼べない?ミクをやって欲しいんだけど。」 「クスクスクス、良いよ呼んでみるよ。」 Bさん、つまり淳が心当たりがあるようで直ぐにケータイを取り出して電話をかけた。 「あぁ、準備できる?………うん、………そうそう。じゃ、来てね。」 二、三言葉を交わして電話を切った。 「…どうって?」 「直ぐ着てくれるってさ、クスクス。」 「ヤッハー!私…俺の恋人が参上するぜ!」 「じゃあ、僕の恋敵になるんだ。」 「Aさん、は悪くないんだよ!許嫁が居たはずなのに緑の娘に惚れちゃった青い人が悪いんだよ!って悪いの私か!」 「やーい、やーい!椿崎の人でなしぃ!スケコマシー!」 「黙れスカタン!私が悪いんじゃねーし!」 「フフ、さっきと言ってること矛盾してるよ?」 「…周助君、そんな痛いとこつかないで。」 「おい、ここで良いのか?」 入り口から声がかかったと思って視線をやるとそこには褐色の肌をした男子が一人。 「えーっと、部長の赤澤――君!」 撫子は過去の記憶を引きずり出して、その褐色男子の名前を見事当てた。 「あぁ…何故、知ってるんだ?」 「私は氷帝学園男子テニス部元マネージャー、椿崎撫子でっす!それなりに過去調べさせていただきました!」 「ってことはダンスの動画をヨウツベに投稿してる撫子さんか!?」 「ハッ!?そう言えば観月君に私の存在を教えた人!」 「俺、ファンなんだ!」 「それはどうもありがとう!けど、一発殴らせて!観月君のたずなはちゃんと握っとけ!」 「お、俺は悪くねぇ!」 「問答無用!そもそも私の動画は笑顔動画から門外不出のはずなのに!無断転載禁止してるはずなのに!」 「それも俺のせいじゃねぇ!」 「赤澤ー、殴られときなよ。我々にとってはご褒美なんだろ?クスクスッ!」 「目ぇ食いしばれ!」 「ぬ、ヌァアアアアア!」 赤澤の断末魔が上がったが瞬間的なものであった。 |
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