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二人は部室に向かう。部室につくなり撫子は跡部に質問をふっかける。 「あとべー、いとべー、うとべー?聞きたいことが有るんだけどさー。」 「アーン?俺様は跡部だ、いとべでもうとべでもねぇ。」 律儀につっこむ庶民の敵。 「別に深い意味なんてないからスルーすれば良かったのに。でさ、今度の練習試合って何時までやるの?」 「4時までだ。」 「おk把握した。ところで宍戸は?」 撫子が辺りを見回すと宍戸以外のメンバーがそろっていた。不思議に思って聞く。 「知るか。おい樺地お前は?」 「知りま…せん。」 「案外告白されてたりして!」 冗談混じりに岳人が言う。 「そんなわけないやろ、俺が告白されてへんのに宍戸が告白されるなんて…なぁ撫子。」 「ねーよ。アンタは中身が残念なんだから。」 撫子の発言に一同が深くうなずく。 「酷っ!」 「まぁ、ほっときゃ来るか。で、みんなにも聞きたいことが。」 「なになに〜?」 ジローがキョトンとした顔で尋ねる。 「ジローかわいい…。じゃなくて、ドリンクの濃さはあれで良い?薄目にはしてみたんだが…。」 昨日は聞く暇が無くて市販の物よりも薄めで提供したのだ。水分が足りていないときに市販の物を飲むと甘すぎる。今回聞いたのは、薄い濃いは好き嫌いが強いからあわせた方が良いだろうと言う撫子の配慮からだ。心が海のように広い撫子だから出来ることだ。撫子がみんな薄口でと言え!変えるのは面倒くさいんだ!と思っていたことは内緒である。 「いや、あれで良い。なぁ?お前ら。」 跡部の問いかけに肯定の意志を見せるメンバー。 「了解。」 撫子は心の中でガッツポーズをした。撫子は準備があるからと、一足早く部室を後にする。 撫子は昨日も思ったことだがもう一度思う。水道場がデカい。蛇口が何個有るんだ。ボトルを並べて一気に水を入れて、後に適量のドリンクの粉を入れれば速攻で部員全員のが作れる。蛇口とボトルの口の位置をミスれば水がはじかれて大変なことになるが撫子はそんなやわなことはしない。ドリンクの準備をしていてふと校舎の方に目をやるとひとりの女子に連れられて校舎の裏に入っていく宍戸を見かけた。 「お?あれは宍戸じゃあーりませんか?…と女子!?マジで告白!?うわー青春だねぇ若いねぇ。」 撫子も青春を謳歌している年齢なんだが、どこか人事だ。 「………ん?」 撫子がガン見していると、何故か撫子の脳裏には嫌な予感が。 「やっべー私、超直感持ってるかも!あ、そこの一年君!これドリンクは準備できたからそれぞれ取って行って!昨日も言ったけど飲むときには振って飲んでね。あとレギュラー陣にも持って行ったら嬉しい。ちょっと私は野暮用が…。」 宍戸の青春の一ページを覗きに行くという名の野暮用が。 「…はい。…あの、ドリンクありがとうございます。」 「…いいってことよ。今まではレギュラーしか無かったっていう方がおかしいっつーの!!折角ボトルは有るんだから!ぶっちゃけ君のような可愛い子のサポートならもう喜んで!!つか可愛い子専属マネになりたい。…飲み終わったらボトルを軽くでも良いからすすいでくれると嬉しいな?」 「わかりました。」 「礼儀正しい子だ。萌えー。」 「?燃え?」 「や、なんでもないよ?じゃよろしく!」 撫子は宍戸が向かった校舎裏へと急ぐ。 「…嫌な予感がしたからって告白を覗くのはダメだったかな…。」 と思いながらも覗くことは止めない。何故ならネタになるかもしれないから。 |
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