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「仁王!我降臨満を持じて!」 撫子は昨日宣言したとおり浴衣を着て脱衣所を出た。そして丁度仁王も出てきた。 「おぉ椿崎。お疲れさんじゃ、まさか俺もターゲットに入っとるたぁ思わんかったぜよ。」 「……やじゃなぁ、そんなにトゲトゲしなさんなって、ホレお前さん顔はええんじゃけぇ、撮らんと損ぜよ。」 「…俺の口調完璧じゃな。」 そう、撫子の今の外見は仁王。銀髪口元ホクロの詐欺師に変装中。 「仁王の口調は基本私の地元と同じじゃろ?後はぜよ、とかきに、とか入れればええんじゃ。簡単ぜよ。」 「ほーっ、それは本番で楽しみじゃな。」 「仁王も口調改めんしゃい。正直、腹筋崩壊しそうぜよ。」 「…アーン?椿崎テメェは面白いことを推奨してんだろ?問題ねーじゃねーか。」 仁王は跡部の格好。何故跡部の格好なのかというと、跡部は自室を別にとっておりあの大広間には存在しないからだ。仁王はそれを利用した。こんな面白そうなこと、わざわざ撫子に扮して不参加、ということもあるまいて。 「なに言っとんじゃ、まずは保身からぜよ。腹筋崩壊とかマジ勘弁じゃき。」 「ふん…そろそろ行くか?仁王。」 「了解じゃ、跡部。」 二人はみんなが屯っている大広間を目指して歩いていった。 「あれー?仁王先輩、撫子さんは?」 部屋につくなり赤也が話かけてきた。 「あぁ、今日のあわせで疲れたらしい、今日はもう寝るっつっとったぜよ。」 「えー!トランプとかUNOとか一緒にやろうと思ってたのに…。」 シュン…となる赤也、ぶっちゃけ可愛い。 や、やだ赤也君マジ天使!!抱きつきたい、抱きつきたい!あ…今仁王の格好になってるからネタにもなるんじゃね?蔵さんには入れ替わりのこと伏せてるし、後から客観的に見てどうだったか聞けば良いし? と思っていたが、 仁王からの殺気のこもった視線が突き刺さっているから止めておく。 「なんじゃ、優しい優しい先輩が椿崎の代わりに相手をしちゃろうか?」 「えー、仁王先輩とやったって面白くないっすもん。騙すばっかしてくるし、」 「…しょうがなかろう、詐欺師の性じゃ。じゃったら…椿崎のイリュージョンで相手になってあげようか?」 少し地声に戻してみた。 「やややや、やっぱいいっす!むしろ今、撫子さんに合わせる顔が無かったっす!」 顔と手をブンブン横に振って拒否る赤也。 「…なんじゃ、つまらん。」 「仁王先輩…詰まらんじゃないですよ……あー!!もう、次会ったらどんな顔して会えばいいのか分っかんねー!」 「……笑えばいいと思うぜよ。」 「は?」 「冗談じゃ、別に普通でえかろう、普通で。椿崎も気にしとらんっぽいしの。」 「あーん?お前ら椿崎となんかあったのか?」 「あれ?跡部さん仁王先輩から聞いてないっすか?一緒に来たから聞いたものかと。」 「こいつとはさっきそこで会ったばかりだ、聞いてるわけないだろうが。」 「そっすか…あれですよ。撫子さんが混浴の露天風呂に居て、俺らも一緒に入っちまったんすよ。」 最後の方は顔真っ赤っか。可愛いなぁ、おい。 「ふん…そんな事か。そんな事で赤くなるようじゃ切原、テメェもまだまだだな。」 「なんすか?跡部さん。もしかして跡部さんも一緒に入りたかったんじゃないんすか?」 ブハァ!!赤也君、なんて発想を!?本物の跡部だったら君、フルボッコだよ。 「何言ってんだ?んなもん改まってみなくても、見たことあるぜ?」 「なっ!?」 「なぁ?忍足?」 下手なことは言えないから仁王はすぐに忍足にパスした。 「あぁ…せやなぁ、撫子は俺らを男と認識しとらんなぁ。むしろ人間っちゅーカテゴリしかないんやないか?」 忍足…俺のことをよく分かってるじゃないか。て言うか…お前らも私を女ってみてませんよね! 「そうじゃのー…今日あわせしたんじゃが椿崎のやつ別室に行かんとそのまま着替えだすけぇびびったぜよ。」 って柳生君が焦ってた気がする。 「や、それは氷帝では当たり前の情景やで?なんや『脱ぐっつってもキャミソールと短パンまでだから恥ずかしくないもん!』やて。」 ご丁寧に一部撫子の声真似らしきものをやった忍足。正直言って、キモウザイ。 「……不完全な声真似せんでくれるかの。耳が腐るぜよ。」 仁王に扮してなかったら今すぐ駆逐してやるところだったぜ?命拾いしたな。 |
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