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「おい、椿崎。テメェに小包だ。」 撫子一行が部屋に戻ると跡部が小包を撫子に手渡した。わざわざホテルに届けるなんて一体何だ?通販なら今頼んでるものはないはずなのだが。 心当たりが思い当たらず?マークを浮かべていたが、伝票を見てみると『byチョココロネ』とあった。 「oh…ジーザス。」 そう言えば、家に居なくて、ここに滞在すると言うことを木手にメールで伝えていた。まさか、律儀に宿泊先に届くようにしてくれるとは…チッ。 「撫子なんだよそれ。」 「岳人…これはね、命を張って着るべき物なのさ。これを着た瞬間私のSAN値は直葬なのさ。むしろ見た人を直葬するのさ。」 「……そうか。」 遠い目で見つめながら言うと空気を読んでそれ以上は突っ込んでこなかった。むしろほうって欲しい感を醸し出していたものを察してくれたのかもしれない。どちらにせよGJであった。 それから簡単に昼食を済ませ、ユニフォームに着替えてテニスコートへ移動。 みんなが着替える中、気配を消して観察しようと意気込んでいたが、跡部に気づかれ連れ出された。跡部に撫子のミスディレクションはきかなかった。仕方なく撫子も自分の部屋に戻り、氷帝ジャージに着替える。 「っと、オートロックだから鍵は持って行かないとね。」 そして、やっとテニスコートに移動。 「なんでスコートやないねん!」 「その台詞前にも聞いたことあるぞ。」 撫子の姿は長袖、長ズボン。さらには帽子まで被っている。UV対策に抜かりはない。 「せやけど撫子さん。それは着込みすぎやないですか?」 撫子のスコート姿を期待していた財前が絶望まっしぐらな表情で聞いた。 「やー…だって、明日仁王と合わせする予定だし…日焼けはちょっとねー。ほら、仁王だってこんなクソ暑い中私と同じ格好してるよ。」 撫子は仁王を指差した。確かに長袖、長ズボンだ。しかし今にもぶっ倒れそうなほどフラフラしてる。仁王は暑さには弱いのである。 「………仁王ー!ドリンクたんと飲めよ。熱射病になって応急救護しないといけないのは私なんだからな。手間増やすなよ。」 「おー…。」 力無く返事。 「……コスプレって想像以上に体はるんすね。」 「キャラの幻想を壊さないようにするためにはこうするしかないんだ。色白設定のキャラなのに色黒かったりしたらいやじゃん?そりゃまぁファンデーションとかで誤魔化せるけど、顔と首の色が全然違ったりするという事故が起きる時もあるからね…。」 「あー!だから撫子ってどんなに暑くてもジャージ脱がなかったんだね!日焼けを気にしてたんだ?俺、てっきり寒がり屋なのかと思ってたC。」 会話にジローが乱入。 「そうそう、日焼けはどうしてもね。防がなきゃ。って言うか、真夏で寒がりってねぇよ。」 「でもよー、撫子って俺らには半袖半ズボンになれってしつこく言ってきたよなー。俺らの腹見てぇんだっけ?」 氷帝一のミニマム、岳人も来た。 「ちょ、目の前に広がる桃源郷。 でも、一つ訂正させて…私は腹チラが見たいだけであって腹が見たいわけじゃねぇ!いいか!チラリズムだ。チラリが大切なんだ!いつもは見えない箇所がチラッと見えてしまう。それが最高なんジャン!?」 「「………。」」 「オイ、お前ら試合するならしろ。しないならホテルに戻れ。」 撫子の興奮状態に見かねた跡部が帰れ、と訴えてきた。普通のメス猫達であったら言う事に従うだろう。しかし撫子だ。跡部に反逆する人間の一種だ。ジト目をして跡部を睨んだ。 「跡部よ…今は部活中じゃないからいいじゃんかよ。雑談させろや。アーン?」 「いや、どうだろう。せっかくこの最高級の設備で試合が出来るんだ。時間は有意義に使った方がいい。」 「…手塚君がそう言うなら今すぐテニスをしようじゃないか。」 「おいコラ、それはどういうことだ。」 撫子はさっさと嫌な任務は果たしてしまおうと、幸村を探すためにその場を離れた。 「幸村ーくーん、ゆーきーむーらーくーんはどこだーい?ゆーきむらくーん、出ておいでー、でないとCP本作っちゃうよー。」 キョロキョロと姿を探すが見当たらない。 「撫子さん、少し良いか?あとそれは寿命がマッハでヤバイ。」 無駄口を叩きながら幸村を探していた撫子に柳が話しかけてきた。 「はいはい?」 「精市は少し遅れてくるそうだ。初めて氷帝の滝や青学の不二と出会って話をしたらしい。思いのほか会話に花が咲いて、打ち切りはしたくないからだそうだ。」 「…了解。という事は自由時間確保…だったら私はみんなを観察しておくよ。こんな機会滅多にないことだから。学校の垣根を越えた新作CP!カミングスーン!」 「あぁ、是非そうしてくれ。そして教えてくれたら最高だ。」 「流石マスター、話が分かるぅ!勿論、教えますとも。」 堂々と観察すると伝えたから邪魔をする人は柳がどうにかしてくれるだろう。柳だって萌え優先な人物であるという事をお忘れなく。考察のためなら魂だって売り飛ばします。 それから約1時間。幸村がコートに現れることなく、撫子はずーっと、観察をすることになった。入れ替わり立ち代りで対戦相手を変えるメンバー達。とても有意義に過ごしているようだ。撫子とってもその入れ替わりは最高だと感じている。雑食の恐ろしいところである。 「撫子さん、少し一緒に打ちませんか?」 撫子は心はホットに頭はクールに妄想しているとリョーマがおずおずと話しかけてきた。少々上目遣いで自身の可愛らしさを前面に押し出している。 「リョーマではないか。ラリーするのかい?いいよ。こんなド素人な私でも良いなら。」 「ヤッタっ!じゃぁ、コート確保してきますね!」 撫子はコートに入ってリョーマを視界のセンターに見据えた。そしてリョーマからサーブがが打たれる。そのボールはとても平和的なポーンとした音が響く。ツイストサーブでもないとても変哲のないサーブだったので撫子は平然と打ち返す。撫子はボールをリョーマのコートの端の方を狙って返した。それを難なく拾うリョーマ。しかし打球が素人よりは重く、リョーマは撫子に声をかけた。 「撫子さん、うまいっすね!」 「えー、そう?まぁ、昔やってたからねー。」 「なんで辞めたんすか!?もったいない!」 「……人間関係のもつれで…ね!」 昔のことを思い出してしまった。リョーマに罪は無いが、先程よりも打つ球に力がこもってしまった。 |
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